「ガラガラなのに、なぜ…」地方の”赤字路線バス”が走り続けるワケ「もったいない」では済まない深刻な事情
乗客がほとんど乗っていない路線バスが、地方の道を走る光景。多くの人が「非効率だ」と感じるかもしれませんが、それでも税金などが投入され運行が続けられています。無駄ではないのでしょうか。
もはやバス会社の努力では限界に
地方の路線バス事業が、極めて厳しい経営状況にあります。国土交通省の統計によれば、新型コロナウイルスの感染が拡大する前、2019年度の時点で、すでに全国の乗合バス事業者(保有車両30両以上)の72.3%が経常赤字でした。
特に地方圏では、事業者の約9割が赤字という厳しい経営環境に置かれていたのです。そこにコロナ禍が襲来したことで状況はさらに悪化し、地域公共交通総合研究所の調査では、2020年度に回答した事業者156社すべてが赤字に陥ったとの報告もあがっています。
かつて多くのバス会社は、高速バスや貸切バス事業の利益で赤字路線を支える内部補助で路線網を維持してきました。
しかし、規制緩和による競争激化で貸切バス事業の収益性が低下し、補助の原資そのものが先細りしていたところに、コロナ禍が追い打ちをかけました。結果、もはやその体力も限界に達しています。
では、なぜこれほど厳しい状況でも赤字路線でバスは走り続けるのでしょうか。
最大の理由は、バスが単なる移動手段ではなく、地域社会にとって不可欠な生命線だからです。特にクルマを運転できない高齢者にとって、バスは通院や買い物など自立した生活に欠かせない生活の足です。
しかし、ここには複雑な政策的ジレンマも存在します。点在する集落へのバス路線を補助金で維持し続けることは、長期的には行政が目指す、居住地や都市機能を中心拠点に集約させるコンパクトシティ構想の動きと、相反する可能性があるのです。





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