低い・狭い・後席は壊滅的 「実用性ないクルマが1台くらいあっても」で生まれたセダンの顛末
「カリーナED」の商業的な成功により昭和末期から平成初期にかけて一大ブームとなったのが背の低い4ドアHT車です。そのブーム末期に登場したクラス最小の4ドアHTモデルは、流麗なスタイリングと引き換えに居住性能は劣悪なものでした。
4ドアHTセダン なぜ流行った?
このクルマの全高は1315mm。一般に乗用車の地上高は140~150mmですから、正味のキャビンスペースは1165~1175mmしかありません。他方で平均的な身長の日本人が快適に乗車できる最低限の天地方向のキャビンスペースは1300mmといわれます。ということは、これより数値が下回ると、シートの構造か、シートバックの角度設定か、天井や床の構造か、人間工学的なレイアウトか、あるいはその全部に無理が生じることになります。

これが運動性を追求したスポーツカーや、競技で勝つためのレーシングカーなら乗員へのしわ寄せも甘受するしかありませんが、「カリーナED」はあくまでも一般ユーザーがファミリーカーとして主に使用するセダン型乗用車だったのです。
開発主査の和田明広氏(のちにトヨタ副社長。2022年没)は、このクルマの発表会で「このような(実用性を欠いた)セダンが1車種くらいあっても良いでしょう」と語ったと伝えられています。たしかにワン・オブ・ゼムで、こうした「変わり種」が存在することを否定するつもりはありません。
しかし、当時の大衆は「セリカ」のスタイリッシュさと、4ドアセダンの実用性を兼ね備えた「夢の1台」としてこのクルマにこぞって飛びついたのです。しかも、このクルマのプラットフォームは「セリカ」や「コロナクーペ」のものを流用しており、メカニズムも既存車種からの寄せ集めだったため、車格の割に販売価格を抑えることができました。
こうなると「安い」「カッコイイ」「4ドア」という条件が揃った「カリーナED」が売れないわけがありません。このクルマが売れに売れまくった結果、1989年のモデルチェンジ時に販売チャンネル違いの姉妹車「コロナEXiV」が追加されます。加えて、「カリーナED」の大ヒットを横目で見ていた他社もこれに追随したことで、4ドア車としては背が極端に低い4ドアHT車が国内市場を席巻することになったのです。
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