消えゆく「客車列車」を“延命” そのやむを得ない事情 北の「ノロッコ号」

全国各地で客車が姿を消す中、ひょんなことから引退を免れた車両があります。それは北海道を走る「ノロッコ号」。しかし、引退は1年先延ばしになっただけ。そこにはどのような事情があったのでしょうか。

牽引する機関車は、製造から約50年が経過

 2025年7月初旬、「くしろ湿原ノロッコ号」の車内は国内の観光客とインバウンドの観光客でにぎわいを見せていました。

 そもそも、北海道の観光列車として人気の高い「ノロッコ号」とはどんな列車なのでしょうか。

「ノロッコ号」はJR北海道が運行する観光列車です。ゆっくりの「ノロノロ」と「トロッコ」を組み合わせて名付けられました。1989年6月に「くしろ湿原ノロッコ号」、1998年7月に「富良野・美瑛ノロッコ号」が運転を開始しています(富良野線では1997年6月に「くしろ湿原ノロッコ号」の編成を使用した運転がされています)。

 当初から、改造した客車や貨車をDE10・DE15形ディーゼル機関車が牽引(けんいん)する形態で運転されています。「くしろ湿原ノロッコ号」「富良野・美瑛ノロッコ号」ともに、510系客車が投入されてからは編成端部のオクハテ510-1・2でディーゼル機関車を制御できるようになり、機関車に押される乗り心地を味わうこともできます。

 DE10・DE15形は国鉄時代に製造されたディーゼル機関車で、510系客車は「レッドトレイン」と呼ばれた50系および北海道向けの50系51形を改造した車両です。DE10・DE15形の力強いエンジン音や汽笛、響き渡る客車のジョイント音は昔の汽車旅を連想させてくれます。

「ノロッコ号」はこうした懐かしさも感じられる反面、車両の老朽化も進んでいます。JR北海道の発表によれば、「ノロッコ号」は運行を継続するものの、老朽化や使用部品の調達が困難であることから、2026年度で運行を終了するとのこと。来年度こそは本当に最後の1年となってしまうようです。

 製造年を見ると、「くしろ湿原ノロッコ号」を牽引するDE10形1660・1661号機はともに1974(昭和49)年1月で、製造から51年が経過しています。「富良野・美瑛ノロッコ号」を牽引するDE15形1533・1534・1535号機は1977(昭和52)年夏の製造です。今も各地で活躍を続けるDE10形と同様、長寿の機関車といってよいでしょう。

 日本国内での客車の旅は、少しずつ過去のものになりつつあります。願わくば「赤い星」「青い星」と「ノロッコ号」の共演を目にしたいところですが、老朽化には敵わないようです。それでも思わぬ形で延命となった「ノロッコ号」は、強運の持ち主といえるのではないでしょうか。

【写真】ディーゼル機関車を先頭にして走る「ノロッコ号」

Writer:

幼少期、祖父に連れられJR越後線を眺める日々を過ごし鉄道好きに。会社員を経て、現在はフリーの鉄道ライターとして活動中。 鉄道誌『J train』(イカロス出版)などに寄稿、機関車・貨物列車を主軸としつつ、信号設備や配線、運行形態などの意味合いも探究する。多数の本とNゲージで部屋が埋め尽くされている。

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コメント

3件のコメント

  1. 赤い星 青い星 に改造される気動車(もと客車)のボディの経年は何年でしょうね? 

  2. 「赤い星」「青い星」の改造元となるキハ143形気動車も、元々、「レッドトレイン」と呼ばれた50系および北海道向けの50系51形を改造ですよね~

    キハ143形のグループのキハ141系気動車は、JR東日本の、キハ141系700番台「SL銀河」の動力付き客車(旅客車)としても活躍しましたね。

    このことにも触れてほしかったです!

  3. 赤いなんとか、青いなんとか

    新造したほうが早いんでないかい?

    改造車にしても、結局のところ五年後くらい以降腐食でガタガタになるのは目にみえてるのだから。

    いつまでも学習しないJR北海道