退役迫る「不死身」攻撃機には“ライバル”がいた! 「見た目違うも能力は同等」→でも製造2機のみ…なぜ?

ついに退役が迫ってきた長寿機A-10 「サンダーボルトII」には、かつてライバル機がいました。それがわずか2機のみの製造で終わった「YA-9」です。なぜA-10に敗れてしまったのでしょうか。

「スペックは十分」だったのに…「YA-9」はなぜ敗れた?

 YA-10が垂直尾翼を2枚備えてエンジンを胴体後部に取り付けた特色ある配置であることに比べると、YA-9は高翼配置でエンジンを主翼の付け根に配置した比較的平凡なスタイルでした。一方でエンジンはYA-9のほうが特徴的で、YA-10 がすでに米海軍のS-3「バイキング」対潜哨戒機で採用されていたTF-34を採用したのに対し、YA-9は当時としては新しい、エンジンの一部回転軸にギヤを組み込むことで、燃費向上などの効果が見込まれる「ギヤード・ターボファンエンジン」のF102を搭載していました。

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2020年6月、「自由の番人作戦」を支援するため、アフガニスタン上空を飛行するA-10「サンダーボルトII」(米空軍パブリックドメイン)

 YA-9の1号機は1972年5月に、2号機は同年8月に初飛行に成功し、10月からはYA-9とYA-10が揃い、米空軍のパイロットによる評価試験が2か月間にわたって行われました。

 飛行試験では両機ともに空軍の要求仕様を満たしていることが確認されましたが、1973年1月米空軍はYA-10 の採用を発表しました。空軍の説明によると、YA-10採用の理由は、エンジン位置と尾翼の配置によりエンジン排気の赤外線拡散が抑えられるため、赤外線捜索追尾システムから探知されにくくなることに加え、垂直尾翼が二枚あることによる生存性の高さ、エンジン出力が大きいことなどが挙げられていましたが、生産面の事情として当時、ノースロップはF-5E「タイガーII」戦闘機の受注が好調で工場の生産余力がなかった反面、リパブリックは航空機の受注がなく、YA-10の採用がなければ航空機部門廃業の危機にあったという状況も空軍の判断に影響したとされています。

 ただ、テストパイロットのなかではYA-9は評価を得ていたようで、感想ではYA-9の飛行性能は戦闘機のような操縦性であったと述べています。

 ちなみに、YA-9 とYA-10の比較審査から3年後の1975年にソ連でSu-25攻撃機が初飛行していますが、同じ目的で開発されたこの機体がYA-9と同じエンジン配置を採用し、しかもほぼ同じ機体規模で登場していることはとても興味深いと感じます。

 なお、空軍では不採用となったYA-9はその後、NASA(アメリカ航空宇宙局)に引き取られ、飛行試験が続けられました。のちに、エンジンが取り外されてQSRA(静粛短距離研究航空機)の実験に流用されました。2025年現在は、1機がエドワーズ空軍基地、もう1機がマーチ空軍基地の博物館で保存されています。

【写真】これが「A-10と同じポジションになったかもしれないレア機」全貌です

Writer:

航空評論家、各国の航空行政、航空機研究が専門。日本オーナーパイロット協会(AOPA-JAPAN)元理事

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コメント

2件のコメント

  1. YA-9も元をたどればミサイリヤー計画の機体設計を流用したのでしたっけ?

  2. A-10は、兵器としての生存性を最優先させた設計で、その分飛行機としての特性には問題があった。

    有名なのは、エンジンを胴体後部上方に設置、つまり重心より高く、遠くから推力が出るので、離陸等で出力を上げると逆に機首が下がってしまうこと。それを緩和するために10度上向きに取り付けられたが、当然水平飛行では抵抗増になって速度が落ちた。

    またエンジンは、左右に離れているので、片発飛行では止まった側に機首が向いてしまい直進性が悪化した。

    対してA-9は、オーソドックスな構成故にクセがなく、テストパイロットに好評なのは当然なのだ。

    当時の米空軍は、新機軸を盛り込んだ本命と、それが失敗したと時に備えてより保守的な機体を競争させる方針を採っており、A-10の問題点を許容レベルにまで改善させて採用したのは謂わば既定の方針であり、A-9はあくまで保険でしかなく、不採用は止むを得なかった。(続く)

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