「バス停移設して」「難しい」 国とバス会社の対立劇、利用者不在の“あっけない幕切れ”に

JR九州が2025年3月に開業した新駅「仙巌園」(鹿児島市)の駅前の国道上に、ポツンと残されていたバス停標識。背景には国とバス会社の対立劇がありましたが、迎えた結末は、利用者不在と受け取られかねない“あっけない”ものでした。

「安全性が向上する」「安全担保できない」分かれた見解

 仙巌園前の停留所を通る路線を走らせてきた2社のうち鹿児島交通が、バス停の移設に反対しました。

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JR日豊本線の仙巌園駅。ホームの目の前が海だ(大塚圭一郎撮影)

 鹿児島交通は、理由としてバスベイが丁字路の交差点内にあり、鹿児島中央駅行きのバスがバスベイから走行する直進車線へ戻る際に、次の信号までの短い間で2車線分の車線変更が必要になることなどを挙げて「運行の安全性を確保できないと判断した」と説明しています。

 利用者の人命を預かるバス会社として安全性を重視する姿勢は理解できます。一方、2車線分の車線変更が必要なバス路線は国内に他にもあり、そのような場所では「車線の後ろを走るクルマはバスが車線変更できるように譲っている」とも聞きます。

 残る1社の南国交通は「従来より安全性が向上する」として移設に賛成しました。

 バスベイが完成した後も、路線バスは左折車線の標識がある場所に停車し続けたため、鹿児島国道事務所は標識の設置者である鹿児島県バス協会に対して3回にわたって標識の移設を求める勧告書を提出しました。

 ただ、鹿児島県バス協会を務めているのは、鹿児島交通を抱える地元有力企業「いわさきコーポレーション」の岩崎芳太郎会長です。岩崎氏は鹿児島商工会議所会頭も務めている地元経済界の重鎮です。ある運輸業界関係者は「鹿児島県バス協会は、鹿児島交通が実質的に主導しているようなものだ」と指摘します。

 勧告に対して鹿児島県バス協会は「承諾できない」と回答し、仙巌園前停留所を使っている南国交通と鹿児島交通に対応を任せるとしました。

 鹿児島国道事務所は再三にわたる勧告に応じなかったとして、2025年8月6日付で鹿児島県バス協会に対して移転措置命令を出しました。期限を同年8月末と定め、鹿児島県バス協会は左折車線上の標識を撤去しました。

【なるほど“ポツン”だ…】問題のバス停(地図/写真)

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コメント

2件のコメント

  1. 交差点を鹿児島ほうこうにもう少しずらせば問題ないのかなと。

    もしくは、バス停を交差点の先の鹿児島側にとかね。

  2. 鹿児島交通というかいわさきの事業免許の取り消しでいいと思う。