副都心線が最後だったのに…ダメ押しの新線「東京メトロ豊住線」なぜ実現? やっぱり「押上から先」は夢のワケ
東京メトロ有楽町線の延伸部となる豊洲~住吉間「豊住線」。この区間は半世紀近くの構想段階を経て、現在は建設が進んでいます。そもそも東京メトロの地下鉄建設は、副都心線が最後になるはずでしたが、どのような経緯で豊洲~住吉間の計画が動き出したのでしょうか。
準備工事が行われた駅がもう一つ
もう一つ、準備工事が行われた駅が押上です。曳舟方ホーム端に立つと、東武スカイツリーライン(伊勢崎線)と直通する1番線・4番線だけでなく、折り返し用の2番線・3番線のトンネルも奥に続いていることが分かります。これは前述の通り、押上から8号線分岐線は亀有まで、半蔵門線は松戸まで延伸する計画があるからです。
押上以北の延伸は2016(平成28)年の交通政策審議会答申第198号において、「東京8号線の延伸(押上~野田市)」「東京11号線の延伸(押上~四ツ木~松戸)」として「整備について検討すべき路線」に位置付けられており、現役の計画です。
しかし実現には大きなハードルがあります。
そもそも副都心線で打ち止めのはずだった東京メトロの地下鉄建設が「延長戦」に突入したのは、東京都が保有する東京メトロ株式の売却(上場)のバーターとして、豊洲~住吉間の整備主体になることを呑ませたからです。
東京メトロは豊洲~住吉間を除く8号線分岐線について、「輸送需要予測の減少等、免許申請時とは事業環境が異なってきたことから、当社としては、整備主体となることは極めて困難」との認識を示しています。
第3セクターなど他事業者が整備主体となり、東京メトロが協力する可能性は否定していないものの、莫大な建設費を負担できる整備主体はなかなか見つからないでしょう。
東京8号線押上~野田市延伸をめぐっては、埼玉県・千葉県の沿線自治体が八潮~野田市間の先行整備を要望していますが、こちらは八潮からつくばエクスプレスへの直通運転を目指しています。実現したとしても、地下鉄とは性質の異なる路線になりそうです。
Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)
1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx
この路線が完成すれば東急と東武の完全分離が実現する
メリット皆無な三直が廃止出来るのは大きい