「鶴見線」も「京浜工業地帯」もルーツは台湾に!? 再発見される“つながり” 背景に日本のセメント王

京浜工業地帯は戦前に造成されましたが、実は海外には“元ネタ”とも言いたくなるような工業地帯が存在します。その背景には、同じ「生みの親」がいました。

浅野総一郎が「哈瑪星」で抱いた野心

 ところで、「浅野総一郎」は李館長から見ると、どんな人物なのでしょう。館長は苦笑しながらも「『やり手の商人』という印象です」と語ります。

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「高雄市立歴史博物館」の李文環館長(松田義人撮影)

「確かに、浅野の開発によって高雄は今日の発展を遂げたわけですから、彼は『高雄の礎を築いた人』に間違いありません。その一方で、浅野は哈瑪星の開拓の前、政府が付近に鉄道を通したことから『この地が必ず栄える』と考えて、周辺の養殖場の土地を購入していました」(李館長)

 哈瑪星が完成して栄えたら政府へ土地を売って儲けよう、などといった考えも浅野にはあったようです。李館長は「個人的な思惑も含めて、こうした先見の明が浅野にあったことも、哈瑪星の開拓が成功した要因であると思います」と話しました。

息を吹き返した哈瑪星と、京浜工業地帯の未来

 なお、京浜工業地帯は高度成長期に日本経済を牽引しましたが、その後は環境問題や産業構造の変化、土地の高騰などによって産業構造を徐々に変化させてきました。

 一方、哈瑪星は太平洋戦争末期に空襲が激化し、海を介しての交易ができなくなったことで衰退。日本統治時代が終わって以降、特に1960年代からは高雄市内の別の港が地域経済の中心となったこともあり、急速に力を失っていきました。

 しかし、哈瑪星は近年になって賑わいを取り戻しつつあります。李館⻑によると、「20世紀末以来、哈瑪星では地域の人々によるコミュニティづくりが重視され、高雄師範大学の張守真教授も歴史調査や評価に携わりました」といい、2007年頃には高雄師範大学の教授たちによる復興計画が立ち上がりました。

 結局この計画は頓挫したものの、後に政府の文化局の後押しも受けて、再建が本格始動。現在は李館長の話によると、政府は鉄道文化園区やアートスペースを整備したほか、当時の銀行施設も修復され、街全体が工業地帯としての歴史を体現するカルチャーエリアへと生まれ変わりました。

 また、京浜工業地帯と哈瑪星の結びつきにも注目が集まるようになっており、2025年9月には日本でも、拓殖大学において「浅野総一郎がつないだ日本と台湾の絆」というシンポジウムが実施されています。

 京浜工業地帯の再編に関しては、まだ目立った動きは明らかになっていません。しかし筆者は昨今の哈瑪星の事例のように、京浜工業地帯の文化・歴史的な遺産や、浅野総一郎が日本と台湾にもたらした功績が、産業の転換とは違う軸として再び評価されると良いなと考えています。

【この人か!】これが台湾の“京浜工業地帯の元ネタ”と「生みの親」です(写真)

Writer:

1971年、東京都生まれ。編集プロダクション・deco代表。バイク、クルマ、ガジェット、保護犬猫、グルメなど幅広いジャンルで複数のWEBメディアに寄稿中。また、台湾に関する著書、連載複数あり。好きな乗りものはスタイリッシュ系よりも、どこかちょっと足りないような、おもちゃのようなチープ感のあるもの。

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