「異例に大きな窓」の列車を世界が評価! “ぜんぶ窓”には法令の壁 どこまで大きくなるのか?
鉄道分野の優れたデザインを表彰する唯一の国際賞「ブルネル賞」の「奨励賞」を、国内の第三セクター鉄道が初めて受賞しました。高く評価された一つが日本の鉄道車両で最大級の「大きな窓」で、着想を得たのは欧州でも、米国でもない国の看板列車でした。
「新幹線が通過してしまう」焦りが生んだ観光列車
えちごトキめき鉄道は、北陸新幹線が長野―金沢間で延伸開業した2015年3月、JR東日本とJR西日本から切り離された並行在来線を引き継いで発足しました。

川西氏は雪月花の開発時について、北陸新幹線の速達列車「かがやき」が新潟県内の上越妙高、糸魚川両駅を通過することが判明して、「軽井沢や(長野、富山両県にまたがる山岳観光ルート)立山黒部アルペンルート、金沢などそうそうたる観光地が連なる中で新潟県には焦りがあった」と振り返ります。
そこで、北陸新幹線で上越妙高、糸魚川のどちらかの駅で下車し、利用したいと思わせるような「他には絶対に負けない観光列車を造る」ことに奮起。利用を想定したのは、北陸新幹線のグランクラスまたはグリーン車に乗り、赤倉観光ホテル(新潟県妙高市)に宿泊するような生活にゆとりがある顧客層でした。
「ガラス張りの列車」に負けない車両を
2両編成の新造ディーゼル車両を造ることは当初から決まっていましたが、大きなガラス張りのデザインは当時の新潟県知事の一言で決まりました。川西氏は当時のえちごトキめき鉄道社長、嶋津忠裕氏とともに新潟県庁を訪れ、泉田氏と面会した際に「『先ごろカナダでガラス張りの列車に乗りました。これに負けない車両をデザインしてほしい』と指示された」と説明しました。
川西氏が早速ひもといたのが、カナダの国営旅客鉄道会社、VIA鉄道カナダが運行する大陸横断列車「カナディアン」の目玉となっている展望車両でした。西部バンクーバー―東部トロントを4泊5日で結ぶカナディアンは、アメリカの有力旅行雑誌「コンデナスト・トラベラー」の読者が選ぶ「世界の優れた鉄道旅行ランキング」で2024年に13位となった世界屈指の人気列車です。
展望車両から眺めるカナディアンロッキーの絶景は道中の大きなヤマ場で、VIA鉄道の愛好家団体「VIAクラブ日本支部」の会員である筆者も2回乗車して感激しました。
ところが、川西氏は「カナディアンは屋根・天井(の中央部)までガラス張りだが、日本では法令上これは不可能だった」と知って壁にぶち当たります。
新潟トランシスの設計担当者らと検討を重ねた結果、日本の鉄道車両で最大級となる窓の横幅2.3mという「鋼体車体でガラス面を法令上および構造上、最大限に広げられる現在の形ができあがった」と教えてくれました。
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