「異例に大きな窓」の列車を世界が評価! “ぜんぶ窓”には法令の壁 どこまで大きくなるのか?
鉄道分野の優れたデザインを表彰する唯一の国際賞「ブルネル賞」の「奨励賞」を、国内の第三セクター鉄道が初めて受賞しました。高く評価された一つが日本の鉄道車両で最大級の「大きな窓」で、着想を得たのは欧州でも、米国でもない国の看板列車でした。
世界的潮流となる? 「大きな窓」デザイン
並行在来線を引き継いだ他の三セク鉄道と同じように、えちごトキめき鉄道は慢性的な赤字経営に陥っています。本業の損益を示す営業損益は2024年度に5億1680万円の赤字となり、新潟県と沿線3市(妙高、上越、糸魚川)からの補助金が経営を支えています。

そんな中で、大きな窓からの眺望を堪能でき、新潟県の特産品をふんだんに使った料理を味わえる雪月花は貴重な収益源となっています。1人当たりの料金が2万9800円(2025年10―11月)に達しますが、関係者は「予約は堅調に推移している」と解説します。
雪月花は2017年の鉄道友の会「ローレル賞」と16年の「グッドデザイン賞」を受けるなど既に高く評価されていましたが、ブルネル賞の栄冠に輝いた話題性で“ご祝儀”需要も期待できそうです。
いずれもブルネル賞の奨励賞を受けた雪月花、トランスイート四季島、トワイライトエクスプレス瑞風に共通する「大きな窓」は、スイスの観光列車「氷河急行」といった欧州の列車にも用いられてきました。窓を大きくして車窓を楽しめるように工夫しつつ、独自性のあるデザインを追求した姿勢が欧州の賞で高く評価されました。
日本では他に西武鉄道の特急用車両「ラビュー」001系も客室の縦1.35m、横1.58mの大型窓ガラスを売りにしています。また、小田急電鉄の幹部は2029年3月の運行開始を目指す新型ロマンスカーの設計で「観光客が走行中の景色を楽しめるように工夫する」と明らかにしました。
そうした流れに加え、「雪月花」などのブルネル賞の受賞車両も手本となって「大きな窓」を売りにした列車が今後もお目見えしそうです。
Writer: 大塚圭一郎(共同通信社経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員)
1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。
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