自衛隊が「ニセ兵器」本格導入へ! 今もダマせてしまう軍用「かかし」!? 納入先が「川崎重工」のナゼ

防衛装備庁が「バルーンデコイ」の入札を公告しました。ウクライナの戦場でその有効性が改めて証明された「風船兵器」は、すでに自衛隊の一部部隊でも導入が始まっています。

ウクライナでは「ミサイルランチャーかかし」大活躍 自衛隊もすでに導入

 こうした工夫もあって、バルーンデコイは現在の戦場でもその有用性を実証しています。

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「ADEX2015」で展示されたK1A1戦車を擬したバルーンデコイ(竹内 修撮影)

 ロシアのウクライナ侵攻に伴い、ウクライナは欧米諸国から多数の兵器の供与を受けています。とりわけアメリカから供与された多連装自走ロケットランチャー「HIMARS」の効果は大きく、ロシア軍はHIMARSを付け狙っていました。

 このためウクライナはチェコのインフレテックが開発した、HIMARSを擬したバルーンデコイを投入してロシア軍に攻撃させ、同国軍に貴重な弾薬の無駄使いをさせたと伝えられています。ロシアが発表したウクライナ軍HIMARSの破壊数の中には、多数のバルーンデコイが含まれていた、とも言われています。

 この一件を機に、各国の軍隊はバルーンデコイにより高い関心を示すようになっています。冒頭で述べた防衛装備庁の一般競争入札も、そのトレンドに反応したものと思われますが、実のところ自衛隊の一部の部隊は、すでにバルーンデコイを保有、または調達を開始しています。

 陸上自衛隊第1高射特科団は2024年9月に北海道の奥尻島で行われた「令和6年度ホーク・中SAM部隊総合訓練」でバルーンデコイの欺瞞効果の検証を行っています。また2025年1月には陸上自衛隊姫路駐屯地が、バルーンデコイを調達するための一般競争入札を行っています。

 第1高射特科団が欺瞞効果を検証したバルーンデコイは、おそらく地対空誘導弾(ミサイル)を擬したものなのでしょうし、姫路駐屯地が発出したバルーンデコイの一般競争入札の公告には「火砲」と明記されています。

 これまで自衛隊が導入を明らかにしているバルーンデコイは、陸上自衛隊が運用する装備品を擬したものですが、防衛装備庁が一般競争入札で調達を予定しているバルーンデコイの公告には納地が「川崎重工業株式会社岐阜工場」と明記されています。

 川崎重工業の岐阜工場は航空自衛隊のC-2輸送機と海上自衛隊のP-1哨戒機の生産を行っており、今回防衛装備庁が調達を予定しているバルーンデコイは、航空機を擬したものなのかもしれません。

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Writer:

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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