自衛隊が「ニセ兵器」本格導入へ! 今もダマせてしまう軍用「かかし」!? 納入先が「川崎重工」のナゼ
防衛装備庁が「バルーンデコイ」の入札を公告しました。ウクライナの戦場でその有効性が改めて証明された「風船兵器」は、すでに自衛隊の一部部隊でも導入が始まっています。
歴史は鎌倉時代から? ハイテク化する「藁人形」
防衛装備庁が2025年9月11日、「バルーンデコイ」の一般競争入札を公告しました。バルーンデコイとは、空気を入れて膨らます、兵器を擬したデコイ(囮)です。

兵器としてのデコイの歴史は古く、鎌倉時代末期の「千早城の戦い」では、楠木正成が兵士を模した藁人形を千早城に並べて、敵対する鎌倉幕府軍をおびき寄せ、集まってきた幕府軍の兵士に大石を落として打撃を与えています。
航空機が偵察手段として普及した第一次世界大戦以降も、自軍が実際より多く兵器を保有していると思わせたり、攻撃目標の選定を妨害したりするために、航空機搭乗員の目や搭載カメラを欺くデコイが多用されています。第二次世界大戦では、名将と評されるドイツのエルヴィン・ロンメル陸軍元帥やイギリスのバーナード・モントゴメリー陸軍元帥が、デコイを有効活用しています。
第一次世界大戦で使用された戦車を模したデコイは木製で、自走機能は備えていなかったため、前線まで馬でけん引していかなければならず、保管や前線への投入に手間がかかっていました。この問題を解決するために開発されたのがバルーンデコイです。
当時のバルーンデコイは現在のものに比べると事故や攻撃でパンクしやすいという難点がありましたが、第二次世界大戦でバルーンデコイを多用したイギリス軍は、ドイツ軍に砲弾を無駄に消費させ、情報収集活動を混乱させたと伝えられています。
「あ、これダマせるな」 実際にみた風船戦車
筆者は2015年に韓国のソウル郊外で開催された防衛装備展示会「ADEX2015」で、韓国企業が出展した、韓国陸軍の主力戦車「K1A1」を擬したバルーンデコイを見ました。
それは間近で見ると「風船だな」とわかるものでしたが、K1A1のフォルムが良く再現されているだけでなく、K1の砲塔上に設置されている情報収集サイトや機銃(ダミー)を装備しており、遠距離からの地上偵察や、高高度を飛行する航空機や情報収集衛星による偵察であれば、十分欺けると感じました。
このバルーンデコイは使用時に電動ポンプで空気を送って膨らませる仕組みで、使用しない時は空気を抜き、折りたためる仕組みとなっており、保管に大きなスペースを必要としません。また折りたたむと容易に多数を輸送できるため、軍の望む場所へ簡単に大量展開できます。
また、バルーンデコイは実物の兵器のように熱を発しないため、赤外線センサーには「風船だ!」と見破られやすいという難点があります。このためK1A1を擬したものを含めた現在市場に出回っているバルーンデコイには、赤外線センサーを欺くため熱源を仕込めるタイプのものが主流となっています。
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