表舞台に出なかった「空自の秘密部隊」メチャ隠していたのに… 急にSNSで存在アピールなぜ?

従来、存在はするものの撮影が厳しく制限され表舞台にほとんど出てくることのなかった部隊が、このたび航空自衛隊の公式SNSで複数の画像とともに紹介されました。一転して公開されるようになった理由を推察します。

空自のいわゆるスパイ機

 航空自衛隊の航空戦術教導団が公式Xに、電子測定機YS-11EBと電波情報収集機RC-2の機体写真を2025年10月6日、投稿しました。YS-11EBは戦後初の国産旅客機YS-11を、RC-2は国産輸送機C-2をそれぞれベースに誕生した派生型で、両機とも胴体にコブのような膨らみが追加されているのが特徴です。

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YS-11EB電波情報収集機(画像:航空自衛隊)。

 両機は、埼玉県にある航空自衛隊入間基地で運用されている機体ですが、かつてはその存在を航空自衛隊も公にすることはなく、外部のメディア関係者ですらも取材時に撮影を厳しく制限された「秘密の存在」でした。

 YS-11 EBとRC-2の任務は基本的に同じもので、SIGINT(シギント)と呼ばれる電波情報収集を行う機体です。

 コブのような膨らみはアンテナ・フェアリングと呼ばれ、内部には電波を探知するためのアンテナが収納されています。他国の軍隊が活動している空域に接近すると、このアンテナはそこで活動している兵器の電波情報を収集・傍受します。この情報は兵器の性能を判別するだけでなく、その電波のパターンから、その兵器の使われ方や相手国の行動動向までも類推することができます。

 つまり、レーダーなどの電子機器が主流となった現代の航空戦において、YS-11 EBやRC-2は相手の軍事レベルや電子戦能力を知る貴重な偵察機(航空自衛隊の公式サイトでは「電波の収集」と表現)だといえるでしょう。

 偵察機といえば、1956年にソ連(現ロシア)領空で撃墜されたアメリカのU-2偵察機が有名です。この機体の偵察手段はカメラによる写真撮影だったため、偵察対象の上空を飛行する必要があり、そのためにソ連空域の領空侵犯を繰り返した結果、撃墜されました。

 電波は遠方まで届くため、YS-11 EBやRC-2がU-2偵察機のように相手国の領空侵犯をする必要はありません。しかし、軍事活動が行われているエリアにある程度接近する必要はあります。

 過去にYS-11 ELが中国軍の戦闘機に異常接近された事例も、そうした電子偵察任務の緊迫した内容の一端を示す事例だといえるでしょう。

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