表舞台に出なかった「空自の秘密部隊」メチャ隠していたのに… 急にSNSで存在アピールなぜ?
従来、存在はするものの撮影が厳しく制限され表舞台にほとんど出てくることのなかった部隊が、このたび航空自衛隊の公式SNSで複数の画像とともに紹介されました。一転して公開されるようになった理由を推察します。
かつての秘密の存在もいまではSNSアピール
航空戦術教導団が公式Xに投稿し文言どおり、電子飛行測定隊は1991(平成3)年11月11日に発足し、同時に電波収集任務を行うYS-11ELの運用がスタートしています。その後、運用機がエンジンをGEP-64に換装したYS-11EBとなり、2020年には新型機としてRC-2も一員に加わりました。

電子飛行測定隊の発足以来、航空自衛隊は約30年間に渡ってこのような任務を続けていますが、周辺国の軍隊を対象とした活動は軍事的にも政治的にも非常にセンシティブなものであるため、航空自衛隊ではその部隊と運用機材について積極的に公表してきませんでした。これは航空自衛隊の訓練において電子戦の敵役を演じるEC-1とYS-11EAも同様です。
だからこそ、メディア関係者も機体が所属する入間基地で取材をする場合は、他部隊の撮影であっても、電子戦任務に関わる前出の機体が画角に入り込まないよう厳しく制限を受けるなど、統制されてきました。
しかし、近年はその状況も変化しています。2014年に電子情報測定隊は戦術教導団隷下の電子作戦群に改編されます。戦術教導団は今年(2025年)の7月7日に公式ホームページと「X」「Instagram」の公式SNSアカウントを開設しており、そこで電子作戦群の任務や運用機材の情報発信を積極的に行うようになりました。
その流れで、冒頭で紹介した投稿も、その一環で行ったものです。かつての「取材では機体外観すら撮影できない」という状況を経験した筆者(布留川 司:ルポライター・カメラマン)からすれば、これは大きな変化だといえます。
従来、なかば公然の秘密とされていた存在が、一転してアピールするようになった理由は何でしょうか。
それは現代戦における電子戦の役割の増大と、自衛隊としてその能力をアピールする狙いがあると推察されます。レーダーやデータリンク能力の発達によって、現代の戦闘機はより遠方の目標を探知・攻撃できるようになり、電子戦に対応した能力を持つことは、現代の軍隊における必須の能力だといえます。
これまで航空自衛隊では電子戦に関連した情報発信を制限していましたが、その一端を見せることは航空自衛隊としての電子戦対応能力をアピールすることに繋がり、日本の防衛力安全保障における抑止力にもなります。
今回のXへの投稿は、現代戦と航空自衛隊の変化の表われともいえるのかもしれません。
Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)
雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info
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