「ぜんぶEVバスにしようと思う」 20年間“中古車だけ”のバス会社首脳が宣言! 旧型バス天国が激変? 採用メーカーは“即答”

九州には、バス愛好家にとって垂涎の的の旧型路線バス車両が多く活躍している運行会社があります。その一つのトップは今後、EV(電気自動車)バスの新車を導入して置き換えていくことを明らかにしました。

導入するEVバスメーカーを即答

 岩崎氏はEVバスを優先的に配備する地域について「地方部だ」とし、大隅半島の営業所などを想定していることを明らかにしました。

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インタビューに応じるいわさきコーポレーションの岩崎芳太郎会長(鹿児島市で大塚圭一郎撮影)

 その理由として、地方部の営業所のディーゼルバスをEVバスに切り替えれば、ディーゼルバスに軽油を給油するための「インタンク(自社給油所)を置かなくてもよくなる」との利点を指摘します。

 ただ、EVバスの充電器の設置に対する補助金が「半分しか出ないのが問題だ」とも言及。業界団体の日本バス協会が2030年までに累計1万台のEVバス導入を目指している中で、岩崎氏は普及を加速させるには充電器設置に「(費用の)100%出すようになれば進む」と訴えました。

 また、導入するEVバスメーカーを尋ねると、岩崎氏は「うちは(韓国の)現代自動車にする」と即答しました。日本では「ヒョンデ」と呼称している現代自動車のバスをいわさきグループは既に導入しており、鹿児島県などで現代自動車の商用車の正規販売店を展開する関係にあります。

 筆者が2025年10月に霧島市の鹿児島空港―JR日豊本線霧島神宮駅間を走る鹿児島交通の「霧島神宮アクセスバス」に乗った際は、現代自動車のディーゼルエンジンを搭載した観光バス「ユニバース」2009年式を用いていました。

 いわさきグループに属する屋久島・種子島交通は2025年4月、現代自動車の中型EVバス「ELEC CITY TOWN(エレク シティ タウン)」を屋久島(屋久島町)に5台導入しました。国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の世界自然遺産に登録されている屋久島は環境負荷低減に力を入れているのに加え、島で使う電力の99.6%を再生可能エネルギーの水力発電で賄っています。このため、電気を使って走り、走行中にCO2を出さないEVを走らせるのに極めて適した環境です。

「ELEC CITY TOWN」は全長8995mm、全幅2490mm、全高3400mm、乗車定員は55人で、充電1回当たりの航続距離は233km(60km/hの定速走行の場合)だとしています。10月13日に閉幕した2025年大阪・関西万博でもスタッフ送迎用に2台、来場者の休憩用に1台が活用されました。

 今後は鹿児島交通の路線バスでも、「ELEC CITY TOWN」の姿が見られるようになりそうです。現代自動車は今のところ大型EVバスについては日本で販売していませんが、岩崎氏は「現代自動車は大型も造れる」として販売開始後の運行を視野に入れています。

【これです!】鹿児島交通などで導入する「国産でも中国製でもないEVバス」(写真)

Writer:

1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。

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