新幹線並みのコスト!? 琵琶湖岸を走る「路面電車」全然“チンチン電車”じゃないワケ-性能も最上級でした
路面電車というと、その字面のとおり一般道の上を自動車やバイクとともに進む、バス代わりの小さな電車というイメージがあります。しかし、滋賀県には超ロングかつハイスペックな路面電車が存在しました。
路面だけじゃない?「京阪800系」が特別な理由
京阪800系電車が路上を走るのは、上栄町~びわ湖浜大津のわずか一区間に過ぎません。しかし、京津線の特徴はそれだけではなく、この電車は「登山鉄道」と「地下鉄」という、全く異なる環境にも対応できるよう設計されているのです。
京津線の上栄町~大谷間には、標高325mの逢坂山を越える最大勾配61‰(パーミル)の急坂区間があります。これは一般的な鉄道の勾配限界(約35‰)を大きく上回り、箱根登山鉄道(80‰)や大井川鐵道井川線(90‰)に次ぐ国内屈指の急勾配です。このため800系は全電動車方式(4M)の車両にVVVF制御と回生ブレーキを採用し、強力な登坂性能を備えています。
さらにこの車両は、京都市営地下鉄東西線に直通運転しています。地下鉄走行のために、ATC/ATO装置、ホームドア対応回路、誘導無線、監視カメラシステムなど、地下鉄用の安全装備を多数搭載しています。
つまり、800系電車は路面電車、登山鉄道、地下鉄と3つの異なる路線を同一車両で運行する能力を備えた三環境対応ハイブリッド電車であり、このような運行形態の特殊電車は日本国内ではここだけのレアな存在だといえます。ちなみに、数々の装備品と特別な設計によって、車両価格は非常に高価で、一説によると車体1m当たりの金額は新幹線に匹敵するとも言われています。だからか、京阪の保有数も8編成32両のみに限られます。
とはいえ、京津線は京都と琵琶湖を最短で結ぶ交通路であり、観光ルートとしても重要な役割を果たしています。
大津市は比叡山延暦寺や三井寺、琵琶湖クルーズなど多彩な観光資源を持ち、京都の喧騒から離れて湖と山の自然を楽しめるエリアです。近年のオーバー・ツーリズムで人口過密状態の京都に疲れた場合は、京津線を利用して大津市まで足を延ばすのも、いいかもしれません。




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