ドローンにミサイルってコスパ悪すぎますよね? レーザーで安く撃ち落とすべきですよね?――防衛大手の答えが「極力安い“ミサイル”」だった背景

スウェーデンのサーブが、「安価なミサイル」と強調する新型ミサイルを発表。安価なドローンによる攻撃の対策としてはレーザー兵器が注目されますが、「ミサイル」もまだまだ重要なようです。

「安価で大量生産を可能にします」

 サーブによると、ニンブリックスはタミルミサイルと同様に、既存のミサイルに使用されている技術や民生品を使いつつ、外装部を中心とするパーツの製造に3Dプリンターを多用することなどで、安価に、かつ大量生産が可能なミサイルにするといいます。

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イスラエルのレーザー兵器「アイアンビーム」(画像:ラファエル・アドバンスト・ディフェンス・システムズ)

 筆者は2017年にサーブの取材でスウェーデンを訪れていますが、まだ小型UASやドローンの脅威が顕在化していなかったその頃から、サーブは主力商品である「ジラフ」レーダーに小型UASやドローンのような、低空を低速で飛行する目標を探知・追尾する、ジラフELSS(Enhanced Low Slow and Small)機能を追加するソフトウェアや、民間空港の遠隔管制システム「リモートタワー」でドローンを検出する技術の開発に取り組んでいました。おそらくこれらの技術開発や研究の蓄積も、ニンブリックスに反映されるのではないかと思います。

レーザー兵器が主流になるまでの「つなぎ」?

 防衛省は小型UASやドローンに対処する装備品として、マイクロ波照射装置とレーザー照射装置の開発を進めています。アメリカ軍は既にマイクロ波照射装置の運用を開始しているとの報道もありますし、イスラエルで開発が進められているレーザー照射装置「アイアンビーム」も、2025年末にイスラエル国防軍への納入が開始されるようです。

 マイクロ波にせよレーザーにせよ効果は試験で証明されており、小型UASやドローンを迎撃するためのコストも、ミサイルはもちろん機関砲よりも安く、将来は主流になっていくものと思われます。しかし、それらが主流となるにはクリアしなければならないハードルがあります。

 アメリカ陸軍の迅速能力導入室(Rapid Capabilities and Critical Technologies Office)は、2024年夏に陸軍演習場である試験を行っています。その結果、防空兵器として出力50KWのレーザー照射装置と小型ミサイルを提供された兵士は、レーザー兵器よりも実績のある小型ミサイルを選択する傾向を強く示したことを明らかにしています。

 迅速能力導入室はこの結果について、レーザーは地表や海面に近いほど指向性が低下することや、雲や雨の影響を受けやすいことから、前線兵士にとっては命を預ける兵器として「頼りなく映ってしまう」と分析しています。

 このため迅速能力導入室は、兵士がレーザー兵器に慣れ、その特性を良く把握し、その成功体験を積ませたうえで、レーザー照射装置への信頼感と、兵器を使用する自信を与える必要があると結論づけています。

 マイクロ波やレーザーは目には見えません。それを使う兵士や、守られる一般の人々から全幅の信頼を置けるようになるまで、ニンブリックスのようなミサイルや機関砲などが必要とされるのではないかと思います。

【もう現実】これが「レーザー兵器でドローンを撃ち落とす」瞬間です(写真)

Writer:

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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