これがリニアの「本番仕様」だ! 金属むき出しの“新型車”に試乗 “黙って背もたれ倒す人”とかどうでもよくなる劇的進化!?

JR東海が山梨リニア実験線に改良型試験車「M10」を導入しました。新幹線の常識を覆す「リクライニング機能のない固定いす」が採用されましたが、そこには品川~名古屋間の乗車時間を踏まえた納得の理由がありました。

塗装された編成の中に「金属むき出し」の新型車

 JR東海が山梨リニア実験線に改良型試験車を導入し、報道陣などに公開しました。「新幹線の座席はリクライニング機能付き」という今の常識を打ち破る固定いすの採用には、納得できる理由がありました。

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山梨リニア実験線の実験センターに停車中の「L0系」の先頭車(大塚圭一郎撮影)

 同社は建設中のリニア中央新幹線で、最高速度500km/hの列車が品川(東京都)と名古屋を40分でつなぐことを目指しています。開業後はリニア本線の一部となる山梨リニア実験線(山梨県)に、改良型試験車「M10」を2025年7月に導入しました。製造したのは日立製作所です。

「本番」の車両への実用化を視野に入れた新たな試みが満載で、これまでの試験車と顕著に異なるのは、車内の座席にリクライニング機能を設けていないことです。背もたれを15度傾けた固定いすを採用しているのです。

「背もたれが倒れて当たり前」という現在の新幹線車両の“常識”破りについて、2025年10月31日に試乗した筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)はJR東海幹部の「例えば…」という比較に納得しました。

 試乗したのはL0(エル・ゼロ)系5両編成の4号車に連結したM10です。省エネルギー化のため、車体の外観はアルミがむき出しで塗装していません。東海道新幹線のような白い車体に青いラインを入れた塗装の試験車に挟まれたM10は、そのままの金属感が異彩を放ちます。空気抵抗を減らすため、車体表面にサメの肌のように微細な溝のある「リブレットフィルム」を貼り付けているのも特色です。

東海道新幹線とは大きく異なる雰囲気

 M10の車内は、東海道新幹線とは大きく異なる独特の雰囲気に包まれていました。筆者は山梨リニア実験線での初代型試験車両MLX01、およびL0系の従来型車両にも試乗しましたが、これらの客室はスカイブルー色の座席を採用し、頭部には白い布をかけていました。背もたれを倒すこともでき、東海道新幹線のN700Sなどの雰囲気に似ていました。

 これに対し、M10の座席とひじ掛けはオレンジ色で、頭部の黒色という“攻めた配色”です。環境負荷低減のため、座席の素材は再利用したポリエステルの糸と、サトウキビの絞りかすを原料の一部に用いたバイオポリエステル糸を用いました。窓も高さ約30cm、幅約20cmに小型化し、旅客機の機内をほうふつとさせます。

 山梨実験センター(山梨県都留市)で乗り込んで座席に腰掛けるとホールド感のある硬めの座り心地で、ゆったりと倒れかかれるN700Sの座席とは明らかに異質です。

【写真】これがリニアの「金属むき出し新型車」です(外観/内装)

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