これがリニアの「本番仕様」だ! 金属むき出しの“新型車”に試乗 “黙って背もたれ倒す人”とかどうでもよくなる劇的進化!?
JR東海が山梨リニア実験線に改良型試験車「M10」を導入しました。新幹線の常識を覆す「リクライニング機能のない固定いす」が採用されましたが、そこには品川~名古屋間の乗車時間を踏まえた納得の理由がありました。
リクライニングがなくても、これがあれば万全!?
試乗では全長42.8kmの実験線の途中にある山梨実験センターを出発し、東端の山梨県上野原市までの15.2kmを最高速度320km/hで走行。西端の同県笛吹市まで最高速度500km/hで往復し、実験センターに戻りました。
最初は車輪で走り、速度157km/hまで加速すると、磁石の力で車体を浮かせるリニア走行に切り替わりました。最高速度の500km/hまでぐんぐんと加速し、最大で40パーミル(1000m進んで高低差40m)の勾配も平然と駆けました。
試乗したのは累計約105kmと東海道新幹線の東京―熱海(静岡県熱海市)間に匹敵する距離でしたが、約25分で走り抜けました。
試乗後に以前から存じ上げているJR東海の重田洋常務執行役員から「乗り心地はどうでしたか?」と尋ねられ、筆者は「以前に乗った2回より進化し、走行中の音は気にならず、耳ツンもなく、座席のリクライニングがなくても十分なスペースでした」とお話ししました。
重田常務は大きくうなずいて「リニアは着実に改良を重ねてきました」とした上で、リクライニング機能がないことをこう例示しました。「映画館では背もたれが倒れない座席でも2時間以上見ていられるので、品川と名古屋の間の40分ならば十分快適に過ごしていただけると考えています」
映画との比較で気づいたのが、背もたれが固定しているという共通点に加え、天井の幕に投射していた走行映像などがまるでスクリーン上の映画のような役割を果たしていた事実です。
出発後には座席から天井を見上げ、いつリニア走行に切り替わるのかというストーリーの転換を見守ります。続いて最高速度500km/hのクライマックスがいつ訪れるのかを観察し、減速後は140―150km/hのタイヤ走行に移行する着地点を見いだす――。
それらのプロセスはまるで映画の上映中のようであり、山梨リニア実験線の試乗が一本の映画を見たようなドラマ仕立てになっていたのだと実感しました。
JR東海はM10の一般向け試乗会を2025年11月6、7両日に実施します。計180区画(360席)を1区画当たり4400円で募集し、抽選倍率は175倍でした。
Writer: 大塚圭一郎(共同通信社経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員)
1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。





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