10年間「国家目標」達成できませんでした――死亡事故急増で「世界一安全な交通ニッポン」計画倒れに 警察トップの考えは
国や地方が5か年の長期計画で進めてきた交通事故死者数の削減目標が、達成まで2か月を残して未達に。“計画倒れ”は2回連続で、10年間未達です。道路環境や行政連携も書き込まれていますが、最大の目的は死者抑制の目標達成だったはずです。
「世界一安心安全な都市」も計画倒れに
一人でも交通事故死者を減らすよう「引き続き、強力に交通安全対策を進めていかなければならないと認識をしている」と赤間委員長は話します。残り2か月を見据えた事故傾向を次のように話します。
「特に、夜間における歩行中の死者数、さらには飲酒運転による死亡・重傷事故が増加するといった特徴がみられると認識しております。これらを踏まえて、警察では関係機関・団体と連携して、歩行者に対する反射材の着用促進、運転者に対する薄暮時の早めのライト点灯を呼びかけるとともに、飲酒運転の取締りを踏まえながら、いわゆる飲酒運転対策をより一層推し進めなければならないと思っております」
10月末日現在、全国でいちばん事故死者数が多いのは東京都です。国の第11次計画に基づき、東京都も独自に交通事故の削減計画を立てています。その内容は「死者数110人以下」「世界一安全安心な都市実現のため、世界主要大都市の中で最も少ないレベルの交通事故死者数を目標」に掲げました。
しかし、東京都の交通事故死者数は10月末日時点で114人。国の計画同様、すでに削減目標を超えています。
事故死者数削減の結果を見る限り、目標当事者の交通事故防止に対する関心は決して高いとは言えません。毎年1月に国家公安委員長は前年の死亡事故状況を振り返りコメントを出しますが、2025年1月の内容では、すでに第11次計画の達成を目指す言葉は消えていました。
高市政権で新しく就任した赤間大臣は就任以来10回以上の会見を重ねていますが、一度も交通事故について語りませんでした。このことについて赤間委員長はこう話します。
「就任後の記者会見において、様々な事柄を発言する機会、他の案件等もございました。決して交通事故、また、さらにその対策、事故原因究明を、次の交通安全基本計画においてそれを脇に置くという認識はございません。当然、この時期のみならず、さらなる交通事故、また、それにより亡くなる方がいないよう、しっかりと我々は心して取り組むこと、このことに変わりはございません」
2000人の事故死者数は、年末にかけて確実に増加します。2024年は2か月で約500人増えました。国や都道府県が立てる交通安全基本計画に盛り込まれた削減目標は、単なる理想なのか、それとも実現すべき文字通りの目標なのか。長期計画の意義が問われています。
Writer: 中島みなみ(記者)
1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。





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