HIMARSそっくり!? 韓国が新型「トラック搭載ロケット砲」を開発 その狙いは? 無人車両化も視野か
アメリカの高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」を思わせる、新たな“トラック搭載ロケット砲”を韓国が開発しました。いま、この新システムを開発した狙いは何なのでしょうか。
兵器を小さくした理由
ハンファ・エアロスペースでは、「HPRS」に先んじて装輪式多連装ロケットランチャーシステム「チョンム(Chunmoo)」を開発・生産しており、「K239」の型式で韓国陸軍に導入されているほか、UAE(アラブ首長国連邦)やサウジアラビア、ポーランドにも採用されるなど、海外輸出にも成功しています。
しかし、「チョンム」の欠点は機動性の低さにありました。「チョンム」は「HPRS」より2倍の弾薬を搭載可能ですが、その重武装によって自重は燃料まで含めると約31tにもなります。この重量ゆえに悪路走破性などはそこまで高くなく、空輸できる輸送機も限られるなど、さまざまな制約がありました。
「HPRS」は、この「チョンム」をコンパクトにした小型化バージョンといえるモデルで、その開発を主導しているのは韓国陸軍ではなく韓国海兵隊です。海兵隊はその特性上、作戦では上陸用舟艇や航空機での空輸を陸軍よりも重視するため、重武装の兵器よりも、軽量で移動や輸送がしやすい機動性のある多連装ロケット砲を必要としたと言えるでしょう。
「HPRS」の搭載弾薬数は、「チョンム」と比べ半分に減りましたが、代わりに車体は小型化され、自重は約19tにまで軽量化されています。これによって、上陸用舟艇による海上からの揚陸や、C-130「ハーキュリーズ」クラスの戦術輸送機による空輸が可能となりました。こうして、機動性を生かした戦い方をする海兵隊に最適なロケットランチャーシステムとなっています。
また、ハンファ・エアロスペースでは「HPRS」と「チョンム」用の新しい弾薬として、最大射程160kmの対艦弾道ミサイル「CTM-ASBM」の開発も進めています。これと「HPRS」を組み合わせれば、侵攻してくる敵艦艇や上陸部隊を迎撃できる沿岸防衛用の地対艦兵器となります。さらに「HPRS」を完全無人化した無人車両バージョンの開発も進められているため、運用人員の削減や、破壊された際の人的損失の軽減も期待されます。
「HPRS」は一見すると「HIMARS」に酷似しているものの、搭載弾薬のバリエーション化や無人型の開発によって、今後は独自の多連装ロケット砲へと進化していくようです。ハンファ・エアロスペースでは当面は韓国海兵隊向けの開発に専念するそうですが、その後はアジア各国を中心に、輸出も目指す模様です。
Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)
雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info





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