ついに実現「高速バスの“自動運転”」に乗った! 見えてきた未来 でも「こりゃ無人化は相当先だ」 実導入の課題は山積み
愛知県で国内初となる高速道路でのバス自動運転の実証実験が行われました。実際に同乗して高速バス事業の将来像も見えてきた一方、当面、「無人は難しい」という事情も分かってきました。
運転士も驚く「人より早い」場面とは
しかし、高速バスの自動運転が簡単だったわけではありません。難しかった点を質問すると、実験を担当する同社第2技術部部長の井上典昭さんは、意外にも「サスペンション」を挙げました。
高速バス、貸切バスタイプの車両は、乗り心地をよくするためエアサスペンションを搭載し、路面の衝撃を、大きな周期のバウンシング(縦揺れ)で受け止め長い時間かけて収束させます。その間、車載したセンサー類も揺れ続け、正確な計測ができなくなります。その補正に苦労したそうです。
また、関係者が一様に緊張する場面は、料金所です。大型車が通過する際、料金所レーンの余裕は左右合わせて約50cmしかありません。今回の実験では、GNSS(GPSなどからの精緻な測位情報)に加え、高精度の立体地図(3Dマップ)による画像解析、また路面上の白線や縁石との距離によって自車の位置を精緻に把握。これにより常時、事前に設定した“軌道”とのずれを修正しながら走行します。
しかし料金所での減速時は、建物や標識など目標となる固定物が遠くて画像解析は使えず、路面上に白線がなく縁石も遠いため、GNSSに頼るしかありません。どうしても自車位置の認識精度が落ちてしまい、その分、“軌道”から数cm単位で左右にぶれることがあります。同乗時にも、一度だけ、料金所進入直前に手動運転へ切り替えてハンドルで修正する場面がありました。
自車の走行位置の認識精度は自動運転のキモであり、当日、運転席に座った名鉄バス主任運転士の鈴木英治さんも「アンダーパス通過時にGPSが遮られた瞬間の走行に気を遣う」と指摘します。“軌道”上に大きな落下物がある場面や工事による車線規制にも遭遇しましたが、現状では手動に切り替えるしかありません。
もっとも、総じて運転は“優等生的”で滑らか、かつ安定しています。鈴木さんとペアを組む主任運転士の北村真基さんは「海上を走る空港連絡橋で強い横風を受けた際のステアリング修正などは、人より対応が早いのではないか」と言います。多くの関係者も「技術面だけを見れば、自動運転は高速道路の方が簡単」との意見です。




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