ついに実現「高速バスの“自動運転”」に乗った! 見えてきた未来 でも「こりゃ無人化は相当先だ」 実導入の課題は山積み

愛知県で国内初となる高速道路でのバス自動運転の実証実験が行われました。実際に同乗して高速バス事業の将来像も見えてきた一方、当面、「無人は難しい」という事情も分かってきました。

自動運転の間は「運転」ではない――ということは?

 バス乗務員は法令により、1日に運転できる時間や、連続して運転できる時間に上限があります。レベル4が実現すれば、自動運転の間は「運転」とみなされないので、事実上、この上限が緩和されることになります。

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当日、運転席に座った名鉄バス運転士の鈴木英治さん(左)と北村真基さん(成定竜一撮影)

 ところが、出勤から退勤までの拘束時間の上限という規制もあるので、高速バスの仕業(運行ダイヤと勤務シフトの組み合わせ)を変える余地はほぼありません。自動運転の動作中、乗務員の身体的負担がどれほど軽減されるかも未知数です。

 しいて言えば、片道4時間前後の中距離路線において、大渋滞や通行止めにより結果として運転時間の上限を超えるリスクを避けるため、連休や荒天時に予防的に配置している交替乗務員が不要になるとか、片道2時間未満の短距離路線において折り返し時間を詰めて仕業を効率化するなど、わずかな改善は期待できます。

 理屈では、経営的なメリットが些少でもまずは事業に実装し、”実戦での経験“がさらに技術を向上させ、大きな進歩につながるサイクルを目指すべきでしょう。しかし法制度や費用負担などの面で、公的な実験以外でバス事業者が自前で自動運転を導入できるようになるまで、まだまだ時間が必要です。

 現在、中小型バスを中心に自動運転バスの実証実験が花盛りです。しかし、ここまでの技術的成果を“見世物”にする段階は越えようとしているように感じます。一方、少子高齢化により国全体で労働力が急減し、各業界が働き手を奪い合う環境は変えられません。「100%自動、無乗務員」の実現は遠いことを理解したうえで、むろん技術面の進歩を止めることなく、それと並行して、今後は少しでも現実の事業に実装するモデル作りに課題が移るでしょう。

 この「いつか到来する未来」と「いま足元の課題」をつなぐ“軌道”作りこそ、バス事業者や、筆者のような事業サイドのコンサルタントに投げられた大きな宿題だと、あらためて痛感させられた一日でした。

【日本唯一!】これが「自動運転の高速バス」が走る高速道路です!(地図/写真)

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