高層ビル並みの巨大貨物船、これでも「ハンディサイズ」って!? 想像を絶する「ばら積み船」の世界 デカけりゃいいでは決してないワケ

常石造船で新型のバルカー(ばら積み船)「PAIWAN DIAMOND」が進水しました。全長180mの巨大な船ですが、それでもバルカーの世界では「ハンディサイズ」に分類されます。バルカーの「サイズ感」って、どうなっているのでしょうか。

デカけりゃいいってわけじゃない!

 今回、常石工場で進水した「PAIWAN DIAMOND」は、こうした数あるバルカーの中でもクレーンを備えた標準的なハンディサイズバルカーで、常石のバルカーブランド「TESS」(Tsuneishi Economical Standard Ship)シリーズの4万2200重量トン型「TESS42」に当たります。

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漁船と比べれば一目瞭然(深水千翔撮影)

 鉄鉱石、穀物、石炭の三大バルク貨物に加えて、木材、ホットコイル、硫黄なども積載ができる上、鉄鋼製品の輸送にも適したセミボックス型ホールドも採用しており、こうした汎用性の高さが主なセールスポイントとなっています。貨物艙容量は5万2400立方メートルとなっており、穀物のように比重が軽い貨物の大量輸送に対応しました。

 国際海事機関(IMO)による国際海運のCO2(二酸化炭素)排出削減を目的とした新造船燃費規制のEEDI(エネルギー効率設計指標)フェーズ3に対応。NOx(窒素酸化物)やSOx(硫黄酸化物)による大気汚染や油流出などによる海洋汚染の防止などの環境対策技術が盛り込まれている上、波浪抵抗を低減する船体形状や風圧抵抗低減居住区、省エネ効果のある船体付加物、独自設計のプロペラなどで燃費の向上を図っています。

 現在の新造船マーケットは好調で3年先の船台も埋まっている上、商談の中心は2029年や2030年納期へと移っています。ただ、国際海運ではGHG(温室効果ガス)削減が課題となっており、環境に優しい燃料としてLNG(液化天然ガス)の導入が進むほか、本格的な脱炭素燃料としてメタノールやアンモニア、さらには水素を燃料として使用する舶用エンジンの実用化に向けた研究・開発が各社で行われています。

 こうしたなかで常石造船はLNG燃料タンクの内製化を実現するとともに、メタノール燃料船や、水素燃料船も開発しており、環境対応船の需要を確実に取り込めるよう投資を行っています。2025年7月には世界初のメタノール二元燃料カムサマックスバルカーを、フィリピンのフィリピン工場(Tsuneishi Heavy Industries〈Cebu〉)で進水させました。技術力で日中韓がしのぎを削る中、新たな世界標準がここから生まれるかもしれません。

【ででで、でけぇ~~】これが「新造船の進水式」のド迫力すぎる様子です!(写真で見る)

Writer:

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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