「日本の鉄道=優れているけど“ガラパゴス”」がここにも? “標準化”の壁 AI活用の“初手でつまづく”恐れ
2025年11月に開催された「鉄道技術展」ではAI活用が多数紹介されました。日本の鉄道はデータ標準化の遅れが指摘される一方、世界に先駆けた先進的な取り組みも始まっています。
AIが変える鉄道現場の「常識」
2025年11月26日から幕張メッセで開催された「鉄道技術展」では、講演会や展示において、鉄道へのAI活用が多数紹介されました。ここから見えた技術の最新動向と、日本が抱える課題を紹介します。
講演会「AIは鉄道をどう変えるのか」によると、日本の鉄道はマルスや券売機・自動改札(サイバネティクス)など、早くからIT技術を取り入れ、世界の鉄道技術を牽引してきた歴史があるといいます。そして日本の鉄道現場は、鉄道各社が独自の職人的ノウハウと高い技術力を背景に発展してきました。
しかし、AI技術が産業界を一変させるAI元年の中で、日本の鉄道はデータの共通化や連携が遅れており、AI学習の「入り口」でつまずき、国際的な潮流に乗り遅れかねないと指摘されています。
AI技術は、従来も運転整理などに活用されてきました。AIを活用することで、鉄道の安全性、快適性に加え、これまで難しかったエネルギーの最適化や、熟練の技術者のノウハウの再現などが可能となります。特に、予測・最適化・検出の分野と相性が良く、現場の働き方、安全性、効率性を大きく変える可能性を秘めています。
例えば「運転整理AI」です。列車運行に支障が発生した際のダイヤ回復作業は、司令員の高度なスキル(経験知)に依存していました。一方、AI(特に強化学習)は、膨大な支障・回復シナリオを学習することで、未経験の支障に対しても高速で最適な回復ダイヤを導き出し、司令員のスキルの平準化が期待されると説明されています。
もう一つの応用分野が、設備の保守管理です。従来の定期的な時間基準保全(TBM)では、まだ使える部品も時間で区切って交換するためコスト増の原因となっていました。これに対し、AIを活用した予知保全(PdM)では、センサーデータや過去の故障履歴を分析し、設備が故障する直前の予兆を捉えることで、本当に必要なタイミングでのみメンテナンスを実施します。これにより、安全性向上とコスト削減の両立を目指すことができます。
AIは、大量のデータを学習し、規則性など複雑なルールベースを自動で構築します。現実にはめったに起きない支障を学習させるためには、シミュレーターを用いて意図的に多様なシナリオを再現し、AI学習に必要なデータを生成しますが、シミュレーターの精度を上げるにも質の高いデータの整備が必要になります。





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