マッハ19の「爆速サンタ」イカれたスピード! 人類は迎撃不可能!? 実は「日本なら可能」かもしれないワケ

フライトレーダー24に、驚異の「マッハ19」という速度で飛翔するサンタクロースのデータが表示され、話題となっています。もし、これを実在の兵器で迎撃しようとする場合、どのような手段が考えられるのでしょうか?じつはそのカギを日本が握っているようです。

SM-3ですら迎撃不可能! そんな人類の切り札とは

 しかし、このSM-3による迎撃には問題があります。まず、弾道ミサイルの場合、一度発射されてミサイルから弾頭が分離されると、弾頭は目標に向かって単純な楕円軌道を描いて飛翔していきます。つまり、弾頭が切り離されても、しっかりとレーダーなどで追尾さえできていれば、それ以降は「いつどこを通るか」という弾道の予測ができるわけです。従って、迎撃ミサイルをその地点へ誘導すれば、見事命中するということになります。

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日米共同開発の新型迎撃ミサイルGPI(画像:ノースロップグラマン)。

 ところがサンタクロースは、上空を自在に移動しながら目的地へと飛翔していくため、弾道ミサイルと比べて飛翔経路の計算と把握が困難となります。さらに、大気圏外を飛翔してくる弾道ミサイルと比べると、サンタクロースは大気圏内の比較的低高度を飛翔します。じつは、SM-3には最低射高、つまりそれ以上低い高度を飛んでいる目標は迎撃できないラインがあり、それが約70kmとされています。そのため、サンタクロースに対してSM-3では対応が困難なのです。

 それでは、一体どのような兵器であれば、このような低高度を超高速で飛翔するサンタクロースに対抗することが出来るのでしょうか。じつは、それが可能かもしれない新型ミサイルを、現在日本とアメリカが共同開発しています。それが、「グライドフェーズインターセプター(GPI)」です。

 GPIは、近年その脅威が高まりつつある 極超音速兵器 (マッハ5以上で飛翔する兵器)に対処するための迎撃ミサイルです。極超音速兵器には、発射後しばらくは弾道ミサイルと同様に上昇していき、その後切り離された弾頭が大気上層部をグライダーのように滑空して飛翔する「 極超音速滑空兵器(HGV)」と、 ラムジェットもしくはスクラムジェットという特殊な構造のエンジンにより巡航する「極超音速巡航ミサイル」という、2つのタイプがあります。

 GPIは、おもにHGVへの対処を念頭に起きつつ、極超音速巡航ミサイルの迎撃も視野に入れた迎撃ミサイルです。名前に「グライドフェーズ(滑空段階)」とあるように、目標が滑空しているところを、キルヴィークルによる直撃破壊で迎撃することを目指しています。イージス艦に搭載して運用される予定で、アメリカではノースロップ・グラマン社、日本では三菱重工が中心となって開発を進めており、2030年代の開発完了を目指しています。

 このGPIは、キルヴィークルに姿勢制御用のサイドスラスターに加え、操舵翼も有しています。これにより、SM-3のそれとは異なり、大気圏内であっても軌道が変化する目標を正確に捉え、迎撃を行うことが出来るわけです。これならば、大気圏内を高速かつ自在に飛翔するサンタクロースであっても、迎撃できる可能性が見えてきます。

 ただし、これだけの速度で大気圏内を飛び回る目標となると、現在GPIでの対処が予定されている極超音速兵器と比較しても、格段に迎撃困難な代物です。やはり、サンタクロースは我々人間の科学力のさらに上をゆく、超人的な存在と言えるでしょう。

【日本にも来た!】世界中を飛び回る「爆速サンタ」の飛行経路を確認(画像)

Writer:

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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