北朝鮮、初の“原潜”を公開! 排水量8000トン超の「戦略ミサイル潜水艦」の実力とは? 金正恩が誇示した“水中核”の正体

北朝鮮は「国防科学発展及び武器体系開発5か年計画」の重要課題の1つとして、戦略ミサイル原子力潜水艦の開発と建造を進めています。北朝鮮は多くの課題を抱えながらも、海軍の近代化を進めており、脅威がさらに高まる恐れがあります。

「深海の核」がもたらす軍事バランスの変容

 軍事力の強化に集中的にヒト・モノ・カネを注ぎ込む北朝鮮ですが、それでも他国に比べると、キャパシティーが限られているのも事実です。国防計画の観点からすると、戦略ミサイル原潜の建造と運用は、とてつもなく大きな負担になるので、もしかしたら原潜の実用化によって北朝鮮軍内部における運用バランスが崩れ、戦力強化や効率化などに影響が出ないとは言い切れません。

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8700トン級原子力戦略誘導弾潜水艦を視察する金正恩総書記(画像:朝鮮中央通信)

 また、潜水艦自体の性能や、運用面での課題、さらに日米韓の対潜戦能力を考えると、北朝鮮としては作戦化において色々と工夫する必要があり、北朝鮮は現在進行形で戦略・作戦・戦術を構築していると見られます。

 北朝鮮は非対称戦を重視してきたことから、戦略ミサイル原潜は合理的で、海軍の「エース」と位置付けるかもしれませんが、他国と違い、遠洋で活動するのではなく、朝鮮半島や友好国である中国やロシア東部の周辺で長く潜航し、日米韓に対する核攻撃の実行を作戦概念としていることも考えられます。

 今後ですが、北朝鮮は来年(2026年)1月以降に労働党第9回大会を発表する予定です。そこで新たな装備計画を発表し、戦略ミサイル原潜の完成と実戦配備を含む、戦力のさらなる強化や、諸課題の克服などに関する指示が出される可能性があります。

 北朝鮮の戦略ミサイル原潜に関するプロジェクトが今後、どのように進むのかについては不透明な部分が多いですが、少なくとも北朝鮮海軍が着実に成長しているのは確かです。ということは、我が国とインド太平洋地域の平和と安定への脅威は高まり続けることは明白であり、日米韓の3か国による防衛力の向上と連携強化が不可欠なのは間違いないでしょう。

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Writer:

長野県佐久市出身。東京国際大学国際戦略研究所准教授。アトランティックカウンシル上席研究フェロー、パシフィックフォーラムスコウクロフト戦略安全保障センター上席客員フェローなどを兼任。幼少期からイギリス、オーストラリア、韓国、シンガポール、マレーシア、インドネシア、米国などで過ごし、防衛政策・戦略・計画、安全保障、交通政策を専門とする。主著に『Defense Planning and Readiness of North Korea: Armed to Rule』(Routledge)、『2030年の戦争』(日経BP)など。Instagram/X: @tigerrhy

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