埼玉県内だけで7時間! 日本唯一のテンダーSL「夜行列車」に乗った 「こんな夜中にまさか…」の連続!?
「夜汽車」の雰囲気が最も似合うのは、蒸気機関車(SL)が牽引する客車列車ではないでしょうか。日本唯一のテンダー式SL列車の終夜運転に乗り込むと、旅情を演出する数々の仕掛けが待ち受けていました。
深夜にシュッシュッ…「住民の理解アリ」
三峰口から熊谷へ向かう車内で、山中さんに「沿線に住宅もあるので、深夜にSLを走らせるのは大変ではなかったですか」と尋ねました。山中さんは、秩父鉄道が過去の夜行列車運行時に地元から理解を得たと説明して「実はSLのブラスト音は、(連結した)12系の発電機の音より小さいのです」と教えてくれました。
ただ、SLパレオエクスプレスの運行時に比べて汽笛を控えめにするなどの配慮をしているそうです。
また、夜行列車をSLで走らせるための要員は、ELの場合の約2.5倍が必要であることも明かしました。安全安定運行を徹底するため、深夜の寒空の下で数多くのスタッフが業務に当たっていることに頭が下がります。
そうした大勢のスタッフの奮闘にも支えられ、「第51三峰号」は終点の熊谷へ定刻の5時56分に着きました。約7時間前に出たのと同じ駅の同じホームに降り立ったにもかかわらず、夜汽車に揺られて旅情を演出する仕掛けを満喫した後だけに「思えば遠くへ来たもんだ」という感慨に浸りました。
「客車と機関車の組み合わせは参加者の人気が高い」という前評判は聞いていましたが、希少性のある夜行列車、それもSLならば人気は絶大で、乗客をひきつける“牽引力”を再認識できた一夜となりました。山中さんは筆者に「秩父鉄道ではSL・ELや電車で年に2~3回夜行列車を走らせたいと思います」と話し、2026年以降の団体臨時列車の運行にも意欲を示しました。
Writer: 大塚圭一郎(共同通信社経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員)
1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。





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