「日本一の秘境駅」を「ふるさと納税」で維持 裏にある豊浦町の「ねらい」と「悩み」
「秘境駅」効果あり しかし、にぎわうほど大きくなる「矛盾」
豊浦町が小幌駅の維持管理を始めて8か月が過ぎました。小幌駅は豊浦町に貢献できたのでしょうか。
「小幌駅を存続させたことで、報道関係から多くの取材を受け注目されました。訪れる方も増えています。町内の温泉施設『しおさい』のご利用も増えています。小幌駅を含めたモニターツアーを企画したところ、ご好評いただきました。その実績を元に今後は日本版DMO組織を立ち上げて、多くの方にワンストップで情報を提供できるよう体制づくりに取り組んでおります」(豊浦町商工観光係)
「DMO(Destination Marketing / Management Organization)」は、観光庁が進める官民共同の地域観光法人です。地域の産業をとりまとめて、一体となって観光地域づくりを推進し、ブランド化を図って宣伝していく組織です。体験型ツアーの開催、旅行会社と提携したツアー作りの提案なども行います。
「小幌海岸の岩屋洞窟には、円空上人が刻んだとされる観音像がまつられ、漁師の守り神とされていました。文太郎浜と呼ばれる海岸もあり、足の不自由な漁師が家族を支えたという物語もあります」(豊浦町商工観光係)
JR北海道と結んだ駅の維持、管理契約は1年間となっています。豊浦町としては観光面の手応えを感じ、来年度以降も更新したい考えです。しかし、そこには課題もあります。ひとつは予算です。JR北海道からの当初の維持費は約150万円でした。しかし、観光客が安心して利用できるように整備すると、約470万円にふくれあがりました。豊浦町はひとまず2年分の予算を確保しています。その後は小幌駅存続のために立ち上げた基金と、「ふるさと納税」の寄付金でまかなう予定です。
「小幌駅と周辺地域の魅力は“秘境らしさ”です。たくさんの方においでいただきたいと思う反面、賑わえば秘境らしくありません。駅周辺に建物を造る、イベントを開催するなど派手にはできません」(豊浦町商工観光係)
利用者ゼロの駅を残し、観光に生かす。秘境らしさと賑わい創出、相反する要素のバランスは難しそうです。豊浦町の挑戦は来年度も続きます。
【了】
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