「夜行列車はオワコン、全廃だ」→「わが国が引き継ぐ!」 10年で見事“復権”させた立役者に聞く“イマっぽい”成功の秘訣
ヨーロッパの「小国」オーストリアで、国際夜行列車が育っています。一時は終焉(しゅうえん)がささやかれていた夜行列車を、オーストリア国鉄が新ブランド「Nightjet(ナイトジェット)」として再構築。その挑戦と戦略をインタビューしました。
賭けだった国際・高速寝台列車「Nightjet」
「夜行列車の最新車両に5億ユーロ(約920億円)以上の予算を使った」――こう話すのは、欧州の夜行列車の運行で最大手と目されているオーストリア連邦鉄道(オーストリア国鉄)の広報担当者、ベルンハルト・リーダー氏です。筆者(赤川薫:英国在住アーティスト・鉄道ジャーナリスト)の取材に明かしました。
「夜行列車」といえば、2016~2017年頃にはその終焉(しゅうえん)が世界的に議論されるほど衰退の一途をたどっていました。それから10年、新型車両に1千億円近い巨額予算を投じても勝算があるほど乗客をつかんでいるのです。成功の秘訣は何だったのでしょうか。
かつては日本全国を走っていた夜行列車ですが、空路の台頭で利用者が激減し、今、定期運行をしているのは東京と高松・出雲市を結ぶ寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」のみになりました。
欧州でも同様、フランスと東欧を結んだシンプロン急行や北急行といった超有名な夜行列車が次々と廃止に追い込まれ、2016年にはドイツ鉄道(DB)が夜行列車事業から完全撤退するという衝撃的なニュースが走りました。
そのドイツ鉄道から夜行列車事業の約半分を4000万ユーロ(当時の相場で約50億円)で買い取り、2016年末に運行を始めたのが、現在ではヨーロッパ夜行列車の象徴的存在となっているオーストリア国鉄の「Nightjet(ナイトジェット)」です。
「ドイツ鉄道が撤退を決めた事業を買い取り、Nightjetのような新しいブランドを立ち上げることは、我々にとって非常に大きな挑戦でした」。リーダー氏は、当時の社内の緊張を明かします。無理もないことかもしれません。
オーストリアといえば、ハプスブルク家の華やかさが今も残る首都ウィーンや世界最大級のザルツブルク音楽祭などで知られていますが、面積は北海道と変わらず、人口は神奈川県より少ない約919万人と、意外にも実態はかなり「小国」なのです。
比べてオーストリアの隣国ドイツは、面積が日本とほぼ同水準で、人口もオーストリアの10倍近くあります(外務省サイトより)。ドイツ鉄道とオーストリア国鉄の売上も約10倍の差があり(両社の2019年の報告書より)、両社の運行規模・路線網の広さなどの差も考えると、ドイツ鉄道が「衰退一路」と切り捨てた事業を買い取ることは、オーストリア国鉄にとっていかに大きな決断だったかが分かります。





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