「夜行列車はオワコン、全廃だ」→「わが国が引き継ぐ!」 10年で見事“復権”させた立役者に聞く“イマっぽい”成功の秘訣

ヨーロッパの「小国」オーストリアで、国際夜行列車が育っています。一時は終焉(しゅうえん)がささやかれていた夜行列車を、オーストリア国鉄が新ブランド「Nightjet(ナイトジェット)」として再構築。その挑戦と戦略をインタビューしました。

国際列車ならではの苦労も乗り越えて

 取材を通じて首尾一貫して感じられたのは、Nightjetが夜行列車でありながら、同時に「国際列車」でもあることを、オーストリア国鉄が非常に誇りに思っているということです。

 オーストリアを起点に西欧・中欧・南欧へと国境をまたぐ18の運転系統を持つNightjetは、「オーストリア国鉄全体の輸送サービスの中では決して大きな割合を占める列車ではありません。しかし、その運行はヨーロッパ各国へ広がっており、オーストリア国鉄にとって不可欠な存在と位置付けられています」とリーダー氏は説明します。

 巨額の予算で欧州連合(EU)の鉄道業界を牽引(けんいん)し、EUの鉄道網のハブとして心臓のような存在であるドイツ鉄道が捨てた夜行列車。それを引き継いだオーストリア国鉄がNightjetを夜の旅客鉄道網の心臓へと昇華させたのですから、その誇りと自信がみなぎっています。

 とは言え、運行面での苦労はあるようです。Nightjetの多くは1000kmを超える長距離を走行し、複数の国を通過します。「EU内でも未だに各国で異なる電源方式、保安装置や安全基準、インフラ規格があり、国際列車特有の課題が存在します。規格の差に対応して一気通貫で走れる設計にする必要があり、新型車両のコスト増加要因ともなっています」とリーダー氏は吐露します。

 また、オーストリア国鉄が誇る昼行列車の高い定時運行率(94%)と比べると、Nightjetの定時性が劣るという点もあります。これは、「超長距離運行や多国間運行による構造的な要因が大きい」そうです。

 こうした課題はあるものの、「オワコン」として捨てられたところから華やかに復活したNightjetは、環境性能、快適性、多様性を重んじたプライバシー、国境を越えたグローバル化という4つの現代的な要請に応えるために生まれた21世紀型の夜行列車です。日本では夜行列車がほとんど姿を消した今だからこそ、ヨーロッパで進化を続けるNightjetの取り組みは、多くの鉄道ファンにとって旅自体に多様性をもたらしてくれる存在になりそうです。

 取材の最後に、広報のリーダー氏から日本の読者に向けて、「ヨーロッパを訪れる機会があれば、ぜひNightjetに乗車してください。ローマやヴェネツィアからウィーン、ミュンヘンへの路線がおすすめです。可能であれば寝台車を予約し、夜行列車ならではの快適さを体験してほしいです。そして何より重要なのは、早めに予約することです」とのメッセージが寄せられました。

 歴史的な円安に悩む日本旅行客にとって、ホテル代を節約するためにも、国際・高速寝台列車Nightjetは注目したい存在です。

【起きたら隣国】これが国際・高速寝台列車の車内です(写真)

Writer:

アーティストとして米CNN、英The Guardian、独Deutsche Welle、英BBC Radioなどで紹介・掲載される一方、鉄道ジャーナリストとして日本のみならず英国の鉄道雑誌にも執筆。欧州各国、特に英国の鉄道界に広い人脈を持つ。慶応義塾大学文学部卒業後、ロンドン大学SOAS修士号。

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