ロシアじゃ飛行機が「軽トラ」代わり!? なかなか更新できず“約80年間現役”の傑作機 「他人事とは思えない」事情とは
旧ソ連で生まれた小型多用途機An-2は、まるで「軽トラック」のようにロシア地域の日常生活に溶け込んでしまった航空機です。設計から80年近く経つ一方、後継機の開発は難航していますが、背景には地方のインフラに特有の問題があります。
後継機は“軽トラ”になれない?
しかし2000年代に入ると、老朽化したAn-2の安全性がいよいよ無視できなくなり、西側諸国では安全基準の観点から、運用制限も課されるようになります。ロシア国内においても、地域航空の崩壊が単なる交通インフラの問題ではなく、国家運営に関わる地方行政の問題として再認識されていきました。
こうしてロシア運輸省・産業貿易省は2019年、ウラル民間航空工場(UZGA)に、An-2後継機の開発をようやく正式委託し、軽量多用途機であるLMS-901「バイカル」が開発されました。しかし小型機といえど、一度縮小してしまったロシア航空機産業のなかで、新型機を設計・開発するのは簡単ではありませんでした。
LMS-901は当初アメリカ製のGE H80エンジンを搭載し、2022年に初飛行しました。しかし、ウクライナとの戦争もあって西側との関係が悪化しているなか、輸入エンジンに依存するのは大きなリスクです。そこでロシアは、国産のクリモフVK-800SMエンジンとAV-901プロペラへの切り替えを決断しましたが、開発が難航し、計画は大幅に遅れました。
それでも2025年12月24日、バイカルはVK-800SMとAV-901を装備して、初飛行に成功しました。エンジンとプロペラ、機体の型式認証取得は2026年中に予定されています。
もっとも、「バイカル」は現代の安全・環境基準に合わせて設計された単発・単葉機であり、従来の「多少無理をしても飛ばす」An-2のような運用は許されません。使えなくなる飛行場も出てくるかもしれません。そうした意味で、バイカルはAn-2の完全な後継機とはいえないでしょう。
また、地域航空の維持には新しい飛行機だけでなく、より安全・安心で経済的な飛行場を整備するという課題も付いて回ります。日本でもローカル鉄道の存続問題が起きていますが、「乗りものを残すこと」よりも先に、「それを受け止めるインフラと覚悟を誰が担うのか」が問われている点では、問題の本質は同じです。
An-2とバイカルの話は、他国のユニークな航空機開発のエピソードではなく、「採算の悪い地域インフラをどう維持するか」という、現代社会に共通の問いを突きつけているように思えます。
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。





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