他国の軍艦が「津軽海峡を堂々通過」→ それダメ…じゃないです!! 国際法で読み解く“特定海域”の意味
最近相次ぐロシア海軍艦艇の津軽海峡通航。陸地との距離の近さから、ともすると「何らかの国際法に違反しているのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、じつは法的に見るとそうではないようです。
特定海峡が「めっちゃ重要だった理由」とは
加えていえば、たとえば青森県から北海道にフェリーで向かう際には、一度日本の領海を出て、国際海域を航行してから再び日本の領海に入ることになります。他国に入国するわけではないのでパスポートなどは必要ないものの、日本の領域を出たという意味では「プチ海外旅行」といえなくもないかもしれません。
ちなみに、なぜわざわざ領海の幅を制限して特定海域を設けたのかについて、日本政府は従来から、「海洋国家、先進貿易国として、国際交通の要衝たる海峡における商船、大型タンカー等の自由な航行を確保することが総合的な国益の観点から必要である」と説明しています。
その一方で、次のような見方も長年なされています。すなわち、海峡全体を日本の領海としてしまうと、アメリカを含む他国の核兵器を搭載した軍艦や潜水艦がここを通過した際に、一時的にであれ核兵器が日本の領域内に持ち込まれる形になり、日本政府が堅持している「非核三原則」の「持ち込ませず」という部分に抵触してしまいます。そこで、あえて公海部分を残したのではないか、というわけです。
一方で、よく「津軽海峡は国際海峡だ」という意見を目にしますが、これについては若干の捕捉が必要です。そもそも「国際海峡」とは、国際航行に使用される海峡のことで、日本において、この意味における国際海峡としては先述した特定海域が該当する、というのが日本政府の立場です。
一方で、海洋に関するさまざまな規定などについて定める「UNCLOS(国連海洋法条約)」では、その第3部に「国際航行に使用されている海峡」という規定が設けられているのですが、日本の「特定海域」はここでいう「国際航行に使用されている海峡」に関する規定が適用されません。
というのも、UNCLOS第36条には「この部の規定は、国際航行に使用されている海峡であって、その海峡内に航行上及び水路上の特性において同様に便利な公海又は排他的経済水域の航路が存在するものについては、適用しない」と規定されているからです。ここでいう「国際航行に使用されている海峡」とは、公海または排他的経済水域同士を結ぶような海峡のことです。そして、その中央部分を公海としている特定海峡については、この部の規定が適用されないのです。
つまり、厳密にいうと、日本政府が定めたところの津軽海峡など5つの「特定海域」は、UNCLOSで規定されている「国際海峡」にはあたらないということになるのです。
Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)
軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。





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