中古の「ベスパ」が1000万円も!? 旧車バイクの価格がここまで高騰する理由とは?「結果的に自分たちの首を絞める」と専門店

現在、二輪・四輪を問わず輸入・国産旧車の値段が急騰しています。一見、「各モデルの現役時代を知る人たちによる大人買い」の影響かと思いきや、実際にはさまざまな背景があるとか。そんな旧車高騰問題を伝説の鉄バイク「ベスパ」を中心に見ていきます。

ベスパの値付けはかなり慎重…!「ときに赤字でも販売する」理由とは

 大橋さんによれば、ヨーロッパから古いベスパを輸入・販売する際、値付けに注意して、ときには涙を飲んだ価格設定をすることもあると言います。

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「ベスパのマニアの方、ベスパをまだよく知らないお客さん双方のサポートをしていきたい」と大橋さん(2026年、松田義人撮影)。

 本来、乗せるべきコストをそのまま乗せた金額で販売すれば、現状の販売価格以上の金額になることがあるそうですが、そのことで前述のような個人売買相場まで上げてしまうと、結果的に自分たちの首を絞める格好にもなるからだそうです。

「たとえば、うちで200万円で販売しているベスパの中には、ヨーロッパでの購入価格がすでに200万円を超えているものもあるんです。それを費用をかけて輸入し、メンテなどの手間をかけて販売するわけですが、本来なら掛かった分に儲けを加えて売りたいところです。でも、それをしないで、あえて赤字で販売することもあるんです。

 その個体にかかったコストをそのまま乗せてしまうと、個人売買も含めて市場全体の相場を上げることとなり、結果的にベスパ文化を後退させ、結果的に自分たちの首を絞める結果にもなりかねません。そのため非常に慎重に価格設定を行い、モデルによっては赤字で販売することもあります」(大橋さん)

 赤字にも関わらず販売をして、得られるものとは一体なんなのでしょうか。大橋さんに聞きました。

「要は、販売させていただいた車輌の維持費で収益に繋げられればと思う一面と、できるだけ市場での価格高騰を抑えることで、新規のお客さまに対しても、価格的に「なるべく入りやすい趣味」として、日本でのベスパ文化を絶やすことがないように、とも考えています。

 どんな商売でもウハウハと儲けられる時代ではないですから、せめて僕らが長年培ってきたベスパで、『ご飯を食べられるくらい』稼がせてもらえれば良いなと思っています」(大橋さん)

 旧車高騰の今の理由をようやくわかった気がしましたが、この時勢を受け、大橋さんは「クラシックベスパに関しては今は過渡期だ」とも言います。

「個人売買によって、『扱えないから処分する』みたいに、結果的にベスパの個体が減っていく心配がありますが、そうならないよう、うちで販売するベスパには、より一層お客さんのサポートを行っていくべきだと考えています。結果的にそれが自分たちの食い扶持になり、ベスパ文化の継承になりますから。

 その一方、たとえば若い世代でベスパのことをまだよく知らなくても『カッコ良いな』と思う人にも、より間口を広げる時期だとも思っています。僕が若かった頃、ベスパを好きになって乗り始めたわけですけど、トラブルが起きた際、お店に修理に出すと相応の費用がかかります。でも、若くてお金がないから修理に出せなくて、色々調べたり先輩に教わったりしながら、必死に自分で修理をしたものです。

 そういった経験があるから、今も若いお客さんが修理依頼に来ると『お金ないんだろう。自分の持ってる工具を全部店に持ってこい。教えてやるから、自分の工具を使って自分で修理してみなよ』と、無償で教えることもあります。

 現在、古いベスパに乗っている従来のファンへのサポートだけでなく、ベスパに慣れない若いお客さんに対しても間口を広げて、『ベスパに乗る、ベスパを維持すること自体を楽しむ』といったことを、改めて伝えていく時期にきているとも思っています」(大橋さん)

【画像】伝説のバイク「ベスパ」の変わらぬ魅力を写真で

Writer:

1971年、東京都生まれ。編集プロダクション・deco代表。バイク、クルマ、ガジェット、保護犬猫、グルメなど幅広いジャンルで複数のWEBメディアに寄稿中。また、台湾に関する著書、連載複数あり。好きな乗りものはスタイリッシュ系よりも、どこかちょっと足りないような、おもちゃのようなチープ感のあるもの。

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