旧軍戦車の独特すぎる配置 なぜ砲塔の「後ろ向き」に機関銃が? 知れば納得、理にかなった理由とは

旧日本軍の戦車といえば、九五式軽戦車や九七式中戦車などに見られる「砲塔の真後ろに付いた機関銃」が特徴的です。大砲と同じ前方向ではなく、なぜあえて後ろ向きに配置したのでしょうか。

日本の戦車開発技術の限界も理由のひとつ

 なお、当時の日本には、まだ車載砲架に同軸機関銃を取り付ける技術はなく、また同軸機関銃の概念の原点となる、砲身の隣に機関銃を配するという発想にも至ることはありませんでした。

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主砲を後ろに回した状態の九七式中戦車(新砲塔)。九七式車載重機関銃のマウントが車体前方側に来ている(画像:オーストラリア・クイーンズランド州公文書館)。

 代わりに、砲塔は360度全周旋回するので、砲とは逆の位置に機関銃を装備して、砲ほど大威力が必要ではなく、逆に機関銃の連射能力で掃射して排除しなければならない、敵の人馬などを駆逐する場合は、機関銃の装備側を前面にして進撃する。逆に、もし敵の堅固な陣地や機関銃巣、砲座などに進撃を阻まれたら、今度は砲塔を180度回して、砲を前面に据え、その火力で撃破していくようにしたのです。

 こうすれば、それぞれの目標に適した火器の使い分けができ、最適の効果が得られるだけでなく、弾薬の節約にもなると考えられたのです。なので日本陸軍では、敵の状況によっては砲塔を後ろに回して、車体側の機関銃に加えて砲塔後部機関銃を前向きに使って進撃や戦闘をすることも、運用方法のひとつとされていました。

 しかしイギリスやドイツといった戦車先進国では、前面に向いている車体機関銃に加えて、砲塔の主砲の傍らに、同軸で機関銃を装備するのが主流でした。これならば、主砲と機関銃の切り替えが瞬時に可能で、しかも砲手が機関銃の射手も兼ねられて便利です。

 ところが日本戦車の場合、砲塔の後ろの機関銃を撃つのは装填手や車長の役割であったため、機関銃使用時には、彼らの「本来の役割」がおろそかになってしまう心配がありました。そのうえ、砲架と連動する同軸機関銃託架や、敵弾命中時には弱点となりやすい防盾の同軸機関銃開口部の構造と設計などは、前述したように当時の日本の技術ではハードルが高いのも事実でした。

 このような事情などから、日本戦車は戦車砲と機関銃を同軸で砲塔前面に装備することはなく、砲塔の前後にそれぞれを据えて、目標に応じて使い分けることにしたのです。結果、砲塔後部に備えた機関銃というのは、日本戦車の特徴ともいえる、独特な機構になったといえるでしょう。

【砲塔後部に機銃あり】自衛隊が保有する「動く旧軍戦車」です(写真で見る)

Writer:

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

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