日本人は世界一周好き? 「飛鳥II」クルーズに集まる人気と期待、専門家はどうみるか

外国人が驚いた日本人の「世界一周」好き

 ただ若勢さんによると、初代「飛鳥」が1996(平成8)年に実施した最初の世界一周クルーズは、予約開始即完売どころの話ではなかったそうです。

「これが発表された1994(平成6)年には、発売と同時に定員の2倍以上の予約が殺到、翌年にもまったく同じコースでの催行を約束することで、繰り延べる乗客に納得して変更してもらったというエピソードがあります。日本のクルーズは1989(平成元)年に始まったのですが、それ(1994年の発表)までは思うように集客できず、『飛鳥』を含め撤退もささやかれる状態でした。しかし、この『世界一周クルーズ』の成功が日本人にクルーズ旅行を認知させ、縮小傾向に歯止めをかけたといっても過言でありません」(若勢さん)

 1994年といえば、バブル景気もすでに終焉を迎えていた時期。そんな時代に、決して安価ではない「飛鳥」の世界一周クルーズが、なぜそこまでの集客に成功したのでしょうか。

「よく言われるのですが、アメリカ人にとっての『究極の旅』とは、自分の祖先のルーツでもある欧州やアフリカなどを訪れる旅だそうです。日本以外に故郷を持たない日本人にとってのルーツとは、まさに地球。とりわけ近代化の端緒となった、明治の先達が憧れた欧州やアメリカへ、それも当時とあまり変わらない30km/hほどの速力で巡る旅として、世界一周クルーズは日本人の想像力を刺激したものだと思っています」(若勢さん)

 また、「世界のクルーズ業界を驚かせたのが、乗客全員が『日本』から『日本』まで、つまり世界一周客で満員になったことですね」と若勢さんはいいます。

「日本人の世界一周好きが、アメリカのメディアでも取り上げられたほどで、今回もそうなると思います。世界の客船では、いまでも多くの乗客が2週間から3週間の区間クルーズに乗っており、世界一周客は少数派です」(若勢さん)

 一方で国内のクルーズ界全体を俯瞰すると、今回の「飛鳥II」における人気ぶりとは隔絶したかのような現状があります。

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