世界遺産が走る「天空の街」インド・ダージリン 待ち受ける3つの「T」とは?

8000m峰を遠望 走る世界遺産に乗る

 翌朝、街の中心部から南下し、さらに高所の標高2590mのタイガー・ヒルの展望台へ上った。目にしたい風景があった。天候など条件がそろえば、標高世界第3位の8586mのカンチェンジュンガの雄大な眺めに出合えるという。ガイドによると、ダージリン観光の三つの「T」の一つが、ここタイガー・ヒルだ。

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タイガー・ヒルの展望台からヒマラヤ山脈とダージリンの街並みを遠望(福崎圭介撮影)。

 ベストシーズンは10月~11月で、山肌に日の光が当たる早朝がいい。乾季でも冬は霧が出やすく、雨季の夏は雲が出やすい。展望台に立った12月下旬のこの日、犬歯のような険しい白い山並みが空にくっきりとそそり立って見えた。下方には緑の丘陵にミニチュアのようなダージリンの街並み――「天空の街」とでも呼びたくなる絵画的な景観だ。近くにいたイギリス人旅行者が「1週間滞在しているけど、カンチェンジュンガを見たのは今日が初めて。君たちラッキーだよ」と笑った。

 残る二つの「T」は何か。既述したダージリンを象徴する紅茶(ティー)と、これから乗車する鉄道(トレイン)である。街の中心部のダージリン駅に戻り、予約していたダージリン・ヒマラヤ鉄道のチケットを窓口で受け取って、出発までの間、蒸気機関車を撮影した。

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ダージリン駅で出発を待つミニSL(ジョイライド)。右上の建物はイギリス植民地時代の影響が色濃く残る(福崎圭介撮影)。

 この古い登山鉄道はイギリス植民地時代の遺産だ。酷暑のカルカッタ(現コルカタ)で暮らすイギリス人たちは、冷涼な気候と景観に優れたダージリンを避暑地として開発。避暑客や、中国から取り入れ栽培に成功した茶の輸送のために鉄道を敷設した。

 全線開通は1881年。現在もニュージャルパイグリ駅とダージリン駅間の88km、標高差2000mをディーゼル機関車が走り、その歴史的価値から世界遺産に登録されている。

 この日乗ったのは、ダージリン駅と隣のグーム駅の間6kmを、イギリス製の蒸気機関車が片道1時間かけて折り返し運転する観光向けのジョイライド(予約指定制、往復1100ルピー=約1800円)。SLは汽笛を鳴らしながら客車2両を引き、610mmの狭軌のレール上をゆっくりと登っていく。「トイ・トレイン(おもちゃ列車)」の愛称で呼ばれる車内は狭く、インド人観光客たちで満席。行き交う人々や街並みが車両をかすめ、路面電車の趣だ。車窓からは空を背にしたヒマラヤ山脈も遠望できる。途中、展望の良いループ状の鉄道橋「バタシアループ」で休憩した後、グーム駅に到着。なお、人気のジョイライドは年々値上がりしているので、運賃が安い普通列車を利用してもいい。

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コメント

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1件のコメント

  1. ダージリンって今、紛争が起きているとも聞いたけど、大丈夫かな?