アクロバット飛行は「巨漢力士との戦い」? 体験して身に染みた機内の過酷さと魅力

飛行機が華麗に大空を舞い踊る「アクロバット飛行」ですが、そのコックピットは、体験してみなくてはわからない非日常世界が広がっていました。

「ブラック」の前に「グレー」もあった

 ブラックアウトとは、高Gによって血流が下半身へ滞留し、脳へ十分な酸素を送り込むことができなくなることによって発生する視覚機能障害であり、まず周囲の色彩が失われ灰色に見えるようになります(この時点を特にグレーアウトと呼ぶ)。そして視野が徐々に狭まり、最悪Gによる意識喪失「G-LOC」を引き起こします。これは貧血を起こして失神してしまうメカニズムとまったく同じですから、体調次第では理論上1Gでもブラックアウトは発生します。

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コックピットのなかでは強烈なGとの戦いが繰り広げられる。写真はイメージ(画像:ウイスキーパパ競技曲技飛行チーム)。

 ブラックアウトに抗う方法はただひとつ。血流が滞留しないよう、便秘時のように下半身に全力を込めて踏ん張り続けることです。今回の体験飛行では予定よりもやや小さい7Gにとどまったものの、戦闘機ならば新型の「対Gスーツ」と呼ばれるパイロットの下半身全体を高圧空気で締め付ける装具があり1G程度が軽減され、また座席を斜めに傾けたリクライニングシートとすることでさらに1G、合計2G程度ブラックアウトを軽減できますから、戦闘機の場合における8~9G相当の負荷は掛かったと見なせます。

 幸い高G維持旋回でも比較的軽度のブラックアウトを体験するだけで済みましたが、およそ15分にわたる曲技のあいだ踏ん張り続けていたことによって、体力はほとんど限界でした。着陸し身体を固定していたハーネスを外して機を降りた際は、全身汗だくで足はフラフラになり、そして強烈な吐き気はその後もしばらく消えることはありませんでした。

 ひと息ついてから内海さんはこう言いました、「今回は7Gからマイナス1G(背面状態)で、乗る人にやさしいアクロでしたよ」と。「どこが…!」と思わず心のなかで絶句してしまいましたが、「競技曲技飛行」はまさしく競技であり、パイロットはアスリートであることを実感させられました。

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