アクロバット飛行は「巨漢力士との戦い」? 体験して身に染みた機内の過酷さと魅力

飛行機が華麗に大空を舞い踊る「アクロバット飛行」ですが、そのコックピットは、体験してみなくてはわからない非日常世界が広がっていました。

「天地がひっくり返る」どころの騒ぎではない!

 内海さんは旧軍の名戦闘機「零戦」や「隼」がやったであろう、格闘戦(巴戦)における空中戦闘機動を再現してくれました。「相手の背後に回り込むように5Gの持続旋回」、文章で書けば一行に満たないこの機動も、普段運動不足の私にとっては異世界といえるものでした。5Gなんて大したことないと思われるかもしれませんが、それでも機内の人間は自分の体重の数倍の力士と戦わねばなりません。

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競技曲技飛行の世界大会に日本代表として出場したこともある内海昌浩さん(画像:ウイスキーパパ競技曲技飛行チーム)。

 そして戦闘機パイロットであれば、体は力士と戦いつつも相手の位置を常に把握し戦術を考え実行します。内海さんが急旋回から突如横転し逆方向へ切り返すように操縦したとき、Gに耐えるだけで精いっぱいだった私の頭脳は、状況を理解する限界に達しつつありました。ロールレート(横転率)が代表的なセスナ機よりも低いという弱点を持っていた「零戦」や「隼」が得意とした、片方の主翼だけを失速させて急横転する「スナップロール」ともなると、一瞬の間に世界が回転し、もはやなにがなんだか分からなくなってしまいました。

 こうした空中戦闘機動や「ループ(いわゆる宙返り)」、「4ポイントロール」や「バレルロール」そして垂直上昇から空中で静止し側転するように回転し急降下へと入る「ハンマーヘッド」、さらに失速ギリギリの低速からの「スピン」といった基本的な曲技飛行課目を体験しましたが、これらにおいて私が大変驚いたのは、Gに晒される中にあって内海さんは平気で喋り続け、飛行の解説をしているという事実でした。

 体験飛行最後の課目は高G維持旋回。事前に地上で受けたレクチャーでは瞬間的に最大で8Gの負荷を掛け、その後も高いGをかけ続けると説明がありました。高いGを発揮するには速度が必要であるため、内海さんはEA-300Lを背面状態で降下させ速度を稼ぎます。そしていよいよその瞬間が来るとコンマ数秒で、これまで「辛い辛い」と思っていたGは単なる「お遊戯」であったことが理解できました。強力なGは体を容赦なく押し付けるだけではなく、いよいよ私の体の内部にまで異常を発生させました。それは「ブラックアウト」です。

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