アクロバット飛行は「巨漢力士との戦い」? 体験して身に染みた機内の過酷さと魅力

飛行機が華麗に大空を舞い踊る「アクロバット飛行」ですが、そのコックピットは、体験してみなくてはわからない非日常世界が広がっていました。

4分間の過酷なスポーツ、「競技曲技飛行」とは?

 実際の競技大会においてはベテランの内海さんでさえ、精根使い果たしてしまうこともあるそうです。内海さんは2010年にポーランドのラドムで開催された世界選手権において行われた「アンノウン」と呼ばれる、飛行直前になって規定フィギュア(曲技課目)が公開されるルールのフライトについて語ってくれました。

※ ※ ※

 アンノウンは事前に練習などは行えない上に、ミスを誘いやすい高難度な課目や予想外の物が出ることも多く、それら複数を連続してこなさなければなりません。世界選手権ラドム大会では『アウトサイドスクエアループ、スナップロールオントップ』という課目が組み込まれており、これは普通のループでは無く正方形を描くループを上下逆に、すなわち背面から開始し足元の方向へ向けて上昇しつつ、またループの頂点でスナップロールを行うというものでした。得点を得るには四辺が同じ長さでなくてはなりません。そしてスナップロールを行うには上昇で減速してもなお十分な速度が必要なので必然的に高速で開始せねばならず強いGを掛けた旋回となります。

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CS3飛行訓練空域にて、2016年ノウン規定競技飛行を練習する内海さん(画像:ウイスキーパパ競技曲技飛行チーム)。

 私は180ノット(333km/h)からマイナス7Gで押し上げ、最後も垂直降下140ノット(260km/h)からマイナス7Gで押す、押せないと地面に刺さるという厳しさに肉体的にも精神的にも疲弊しました。プラスのGによる負担は踏ん張ればなんとかなりますが、マイナスGについては耐えるほかにどうしようもなく肉体への負荷ははるかに強烈で諦めるしかないのです。

 ほかにも似たような鬼課目が並んでいて、演技終了後ヘロヘロで着陸した際にはあまりの疲れにフレア(着地時の衝撃を和らげるための機首上げ)も雑になってしまい、三点姿勢のままで滑走路を跳ねながら止まるのを待つしかありませんでした。

※ ※ ※

 1回の曲技はわずか4分。離陸から競技曲技飛行を終えて着陸するまではせいぜい十数分程度であるにも関わらず、着陸後パイロットが自力でコックピットから這い出ることもできないほど疲弊するという例は決して珍しくないと内海さんは言います。

 地上で曲技飛行を見学するぶんには、実に気持ちよさそうに飛んでいると思えるかもしれません。しかしそのコックピットの内部は、まさに地獄と呼ぶにふさわしい過酷な環境での戦いが繰り広げられていたのです。

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