操船の自動化、研究の最前線とは? 日本郵船ほか5社、最新研究の一部を公開

船長の判断、どう数値化?

 実際のところ、他船の接近に対し自動で警報を鳴らすことはすでに実現しているのですが、たとえばマラッカ海峡など船が輻輳する(混み合う)ような場所ではあまり役に立たないといいます。近くを並走し安全に航行しているような場合でも、これが安全か否かは自動で判断することができず警報が鳴るとか。つまり現状、それがどの程度危険かという度合いは計ることができないのです。そうなると警報が鳴り響き続け警報が警報の役をなさないような場合もあり、本当に危険な状況を見落とすようなことにもつながりかねません。そこで上述のようなランク付けが実現すれば、こうした事態も回避できるというわけです。

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日本海洋科学のシミュレーター。時間帯や天候はもちろん、神戸港やマラッカ海峡といった場所も設定できる(2017年12月26日、乗りものニュース編集部撮影)。

 これに必要となるのが、実際の操船と変わりない環境におけるデータの収集ということで、操船技術の訓練にも使用される日本海洋科学のシミュレーターが活用されています。実際に報道陣も、船長が操船するシミュレーターに同乗したのですが、リアルに再現されたブリッジの周囲360度を円筒型の大型モニタがぐるりと取り囲み、そこへ作り込まれた映像が流れると、実にリアルな体験として認識できるものでした。「作り込まれた」というのは、周囲を航行する船影や天候のみならず、たとえば神戸港や横浜港などの風景も忠実に再現されている点です。これは実際に船を動かす際に、建物や橋りょうなどを目印にしている操船スタッフもいるからだそうです。

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シミュレーターのコンパス。
日本郵船の自動車専用船「アリエス・リーダー」のコンパス。

 シミュレーターには夜景も再現され、モニターに神戸港沖からの美しい夜の街並みが映し出されましたが、実は船乗りにとってそうした夜景はとても厄介なものといいます。というのも、夜間航行の際、船は目印となる灯火を船体側面に必ず灯すのですが、これが見づらくなるのです。実際にシミュレーターで夜の海を再現すると、先ほどまですぐ隣に巨大な姿を見せていたコンテナ船が、暗闇のなか、小さな灯火しか見えなくなってしまいました。100万ドルの夜景が背景だと、確かに簡単に見落としてしまうでしょう、もちろんレーダーなどで他船の位置を把握しつつ航行を続けるわけですが、目視できないというのは実に心細いものです。実際の海上でこのような航行を続ける操船スタッフの心労たるや、いかばかりのものでしょうか。

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古野電気のスタッフによる聞き取り。田口船長の判断が数値化されていく(2017年12月26日、乗りものニュース編集部撮影)。

 シミューレ―ション終了後には、収集されたデータについて、船長からの聞き取り調査が行われます。このとき、「とある位置にいる他船のとある動き」というデータに対し、船長はどの程度危険とみなしたか、あるいは認識すらしなかったか、といった、いわばタグ付けをしていきます。そうして数値化したデータを蓄積していくことで、先の「とある位置にいる他船のとある動き」がどの程度衝突の危険にあるのか、という度合いが、実際の操船者の肌感覚に近いラインで指標化されていきます。これにより、東京湾などのような輻輳する海域においても、より安全で、かつ操船スタッフの負担を軽減する環境を構築できるというわけです。そして従来、経験をもとに各操船者が予測、判断していた危険回避行動が、将来は経験豊富な操船者の判断基準で予測、判断できるようになるのです。

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コメント

1件のコメント

  1. 陸とは違って潮とか波とか風とかの向きとか強さとかで簡単に針路が変わるし、海に明確な道があるわけでもない。実用化は相当厳しい。それでも他船からの緊急回避が可能なら、30年前のフィリピンの沿岸客船ドニア・パス(約2600総トン、本来の定員約1500名、但し実際乗船4200名以上、乗船名簿未整備のため実数不明)と、小型ガソリンタンカーヴェクター(約700総トン、26名乗り組み、1000tガソリン満載)との衝突炎上事故(生存者ドニア・パス側22名、ヴェクター側2名。死者、行方不明者双方合計最低でも4200名以上、実数不明)のような衝突事故は減るだろう。