特定地方交通線「除外規定路線」全線データ 40年を経て輸送密度は10分の1に

JRローカル線の廃止が最近増えてきました。これらの多くは国鉄再建法の除外規定で残った路線です。「除外規定路線」全線の当時の輸送密度データをいまと比較したところ、利用者のさならる減少でいよいよ路線維持が難しくなってきた現実が見えてきました。

各地で浮上するJRローカル線の存廃問題

 島根県の江津駅と広島県の三次駅を結んでいたJR西日本のローカル線・三江線が2018年3月31日(土)限りで営業を終了。4月1日(日)に廃止されました。その全長は108.1km。全長が100km以上に及ぶJR線が一度に廃止されたのは、1995(平成7)年に廃止されたJR北海道の深名線以来、23年ぶりのことです。

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2018年3月31日限りで廃止された三江線(画像:photolibrary)。

 三江線は沿線人口の少ない中国山地を貫くルートで利用者も少なく、1日1kmの平均通過人員(輸送密度)は1977(昭和52)~1979(昭和54)年度の平均で640人でした。その後も過疎化や道路整備の影響で利用者の減少に歯止めがかからず、JR西日本が発足した1987(昭和62)年度の時点で458人に。2015年度には58人まで落ち込みました。

 これに加えて三江線は水害や雪害による長期運休が相次ぎ、災害対策費や施設の老朽化対策費もかさんでいました。このためJR西日本は2016年、三江線の廃止を正式に表明。沿線の自治体も最終的には廃止を受け入れたのです。

 ところで、三江線の輸送密度をみて「そんなはずはない」と思った人がいるかもしれません。国鉄の分割民営化によって発足したJR各社は、輸送密度が4000人未満のローカル線を引き継いでいないはず。にも関わらず、輸送密度がJR発足時点でも3桁だった三江線が、いまのいままでどうして存続していたのでしょうか。

国鉄時代にローカル線は整理されたはずだが…

 戦後の国鉄は、海外からの引き揚げ者の雇用や、ローカル線の建設、大都市圏での輸送力強化などの影響で経営が極度に悪化。1980(昭和55)年には、利用者が少なく赤字経営のローカル線の廃止などを盛り込んだ日本国有鉄道経営再建促進特別措置法(国鉄再建法)が公布され、法律に基づき経営の改善を図ることになりました。

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北海道の名寄本線は国鉄再建法に基づき1989(平成元)年に廃止された特定地方交通線。写真の上興部駅跡では駅舎や車両が保存されている(2017年10月、草町義和撮影)。

 実際にローカル線の存廃を決める基準は、国鉄再建法に基づく政令(国鉄再建法施行令)で定められています。具体的には、「基準期間」とされた1977(昭和52)~1979(昭和54)年度の輸送密度が4000人未満の路線を「特定地方交通線」に指定。沿線自治体などとの協議を経て、鉄道を廃止してバスに転換するか、もしくは沿線自治体が出資する第三セクターなど国鉄以外の事業者に運営を引き継がせることになったのです。

 こうして国鉄は、輸送密度が4000人未満のローカル線を第1次から第3次までの3グループに分けて特定地方交通線に指定。1983(昭和58)年から1990(平成2)年にかけてバス転換や第三セクター化が図られました。

 なお、国鉄は1987(昭和62)年に分割民営化されましたが、特定地方交通線は当初の計画通り整理されたため(バス転換や第三セクター化が図られるまでは、JR各社が暫定的に継承)、かつての特定地方交通線は現在のJR線には存在しません。つまり、JR各社は基準期間の輸送密度が4000人未満のローカル線を引き継いでいないはずです。

「除外規定路線」がそのままJRへ

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Writer:

鉄道誌の編集やウェブサイト制作業を経て鉄道ライターに。2020年から鉄道ニュースサイト『鉄道プレスネット』所属記者。おもな研究分野は廃線や未成線、鉄道新線の建設や路線計画。鉄道誌『鉄道ジャーナル』(成美堂出版)などに寄稿。おもな著書に『鉄道計画は変わる。』(交通新聞社)など。

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