「電車修理代を稼がなくちゃ」から12年 再度の危機脱した銚子電鉄はいま(写真48枚)
「日本一のエンタメ鉄道」目指す
利用者の減少はいまも続いています。2015年度の輸送人員は約38万8000人で、2007(平成19)年度の半分以下になりました。経営的にも綱渡りが続いており、2016年度は約3000万円の赤字を計上しています。
これはJR銚子駅構内のコンビニエンスストアが駅舎の建て替え工事で一時閉店し、ぬれ煎餅の売り上げが落ちたため。竹本社長は「ぬれ煎餅は我が社にとっての“補助金”。これがないとやっていけません。あらゆる販売ルートを使って、ぬれ煎餅の売り上げを回復させるのが急務です」と話しますが、鉄道の赤字を副業の収入で埋められる程度に抑えるためには、鉄道の経営改善も必要です。
銚子電鉄は「日本一のエンタメ鉄道」をコンセプトに掲げ、観光客の誘致による鉄道の経営改善を目指しています。「沿線の人口が減っていますし、新しい切り口でやっていかなければなりません」(竹本社長)。車内をお化け屋敷に見立てた「お化け屋敷電車」を運転するなど、近年はイベント列車による増収に力を入れています。
このほか、レトロなイメージでデザインした「超レトロ電車」も導入するといいます。現在運転されている2000形電車2両×2編成のうち、1編成の外川寄り1両(クハ2501)を改装。その費用は命名権(ネーミングライツ)の販売収入でまかない、「金太郎ホーム号」という愛称が付けられました。外装はすでに完成していて営業運転を行っていますが、2018年6月中には車内もレトロ感あふれる装飾が施される予定です。
竹本社長は「イベントがない日に楽しめる企画もいろいろ考えています」とも話します。「3の倍数の日は(運転士や車掌の)敬礼を変えてみるとか(笑)。くだらないことでいいんですよ、くだらないけどお客さんが笑顔になるような、そんなことを常にやっていきたいです」。
各地のローカル線は利用者の減少による赤字経営に悩んでおり、一部の路線は実際に廃止されています。さまざまな苦難を乗り越えてきた銚子電鉄も例外ではありません。「日本一のエンタメ鉄道」というコンセプトが鉄道維持の鍵となるかどうか、今後の動きが注目されます。
【了】
Writer: 草町義和(鉄道ニュースサイト記者)
鉄道誌の編集やウェブサイト制作業を経て鉄道ライターに。2020年から鉄道ニュースサイト『鉄道プレスネット』所属記者。おもな研究分野は廃線や未成線、鉄道新線の建設や路線計画。鉄道誌『鉄道ジャーナル』(成美堂出版)などに寄稿。おもな著書に『鉄道計画は変わる。』(交通新聞社)など。
2000形2002編成のデハ、京王特急カラーに戻してもらえたらいいなあ。