赤十字マークの救急車あまり見ないワケ 自衛隊では逆に一般的なのも実は同じ理由

扱いは厳格なのに規格はユルいワケ

 この赤十字マークですが、実は厳格な規格はありません。白色系統の背景に赤色系統でで十字を描いていれば、形や寸法にはとらわれずに効力を発揮するのです。なぜならば、戦場という場所の特性上、常に正規の旗や表示が用意されている訳ではなく、臨時で赤十字マークを作る必要があるかもしれないからです。そうしたとき、もし厳格に規格が定められていたとするならば、サイズや形が少しでも違うと、それを口実に敵に攻撃されてしまう恐れがあるためです。

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後方地域に展開する野戦病院テントに描かれた赤十字マーク(矢作真弓撮影)。

 赤十字以外にも同じ意味を持つマークがあります。それが赤新月とレッドクリスタルです。赤新月は十字がキリストを連想させるとの理由から主にイスラム圏で使用されており、レッドクリスタルは2007(平成19)年から新たに使用が認められたマークとして導入されています。

 そこで注目したいのが、自衛隊における赤十字の使い方です。一般の救急車には赤十字マークは使われていませんが、自衛隊の救急車には赤十字が描かれています。ほかにも、ヘリコプターやトラック、装甲車にまで赤十字が掲げられているものがあります。ではなぜ戦闘をすることができる装甲車などに赤十字が描かれているのでしょうか。

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赤十字を掲げる96式装輪装甲車(矢作真弓撮影)。

 自衛隊では、こうした戦闘車両であっても、赤十字を掲げているあいだは戦闘に加わることをせず、あくまでも傷病者の運搬のためだけに使用する、との明確な理由を掲げているからです。そのため、攻撃する気満々の車両が、敵からの攻撃を避ける目的で、わざと赤十字を掲げることはできません。これは背信行為といわれ、赤十字マークは攻撃しないという相手の信用を裏切ることになり、戦争犯罪となります。

 無秩序に行われていると思われる戦争行為なのですが、実は多くのルールに則って行われているのです。それが国際人道法であり、そのなかのひとつのルールがこの赤十字の取り扱いなのです。

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コメント

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1件のコメント

  1. 空母いぶきじゃ中華空母の護衛だけどな。