海自艦「あたご」弾道ミサイル迎撃試験に成功 実際に撃ち落とせること以上の意義とは

「あたご」がBMD能力をもつ意義とは

 それでは、今回の試験で確認された「あたご」のBMD能力は、日本にとってどのような意義があるのでしょうか。

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海上自衛隊の護衛艦「あたご」(画像:海上自衛隊)。

 まず、BMD能力を備えたイージス艦が増勢したことにより得られるさまざまなメリットが挙げられます。これまで海上自衛隊に存在するBMD能力を備え、かつその能力を実証したイージス艦は4隻の「こんごう型」のみでした。しかし、この隻数ではいつ発射されるかわからない弾道ミサイルに対する365日の常時警戒実施が困難であることが、ここ最近までの北朝鮮の弾道ミサイル発射に対する警戒の実施によって明らかになりました。どんなに高性能であろうと、イージス艦もフネであり、洋上でずっと任務に就くことはできません。一度任務に就けば、その後港や基地に戻って修理や補給をする必要があり、また乗員の疲労という問題も出てきます。そのため、BMD任務を実施できるイージス艦が増えれば、その分警戒を行うイージス艦1隻当たりの負担は軽くなり、従来よりも柔軟な警戒実施が可能となります。さらに、有事に際して実際に弾道ミサイルが発射された場合、BMD任務に対応可能なイージス艦が多ければ多いほど、弾道ミサイルを迎撃できる確率や防衛の密度は当然高まることになります。つまり、日本のBMD態勢に「あたご」が加わることで、日本の安全がより確実なものに近づくこととなります。

 加えて、今回の試験成功によって、日本の弾道ミサイル迎撃能力が確かなものであることを、世界に向けてアピールできたことも重要でしょう。これまで日本は「こんごう型」4隻による弾道ミサイル迎撃試験を計4回(JFTM1から同4)実施し、うち3回迎撃に成功しています。今回の結果も加えれば5回中4回、つまり80%の確率で弾道ミサイルを迎撃できたことになります。日本のBMD能力の高さを十分に示す数字でしょう。これはつまり、もし、どこかの国が日本に弾道ミサイルを発射しようと考えた場合、そこに立ちはだかる壁が非常に高いということを意味し、それによって相手に弾道ミサイルの発射を思いとどまらせることができるかもしれません。

 つまり今回の「あたご」の試験成功は、実際にBMD能力が確認できたという意味に加え、日本のBMD能力をアピールできたことによって、日本の抑止力向上につながったものと考えられます。

【了】

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