結石治療と対戦車兵器の数奇な関係 航空機メーカーの失敗がもたらした大きな恩恵とは

転んでもただでは起きず、ESWLの実用化へ

 このアイデアを元に、1972(昭和47)年に試験管内の結石の破砕に成功。1979(昭和54)年には世界初の人体用腎結石破砕装置が完成し、翌年には人体内にある1.5cmの結石の破砕に成功します。これが初のESWL(体外衝撃波結石破砕)による人体治療例となりました。1983(昭和58)年には「HM3」として初めて販売されることになり、日本でも1984(昭和59)年9月に北海道の三樹会病院が初めて導入。それを皮切りに、一気にESWLが普及していきます。

 航空機の歴史に名を残し、日本の航空機産業にも影響を与え、ESWLを実用化したドルニエ社。大戦中はおもに、Do17やDo217といった爆撃機を生産し、戦後はDo27、Do228といった短距離離着陸性能に優れた航空機も生み出しました。1996(平成8)年、アメリカのフェアチャイルド社に買収され、フェアチャイルド・ドルニエ社となりましたが、そのフェアチャイルド・ドルニエ社は2002(平成14)年に経営破綻し、航空機メーカーとしてのドルニエ社は消滅してしまいました。

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2013年に海底から引き揚げられ、イギリスのコスフォード空軍博物館で保存作業中のDo17(石動竜仁撮影)。

 しかし、その医療部門は現在も存続し、ドルニエの名前を受け継いだドルニエメドテック社(ドイツ)が、ESWLの大手メーカーとして活動しています。

 もともとは人を殺傷するための兵器研究が、人を激しい痛みから低リスクで救う技術になったという、稀有な例かもしれません。

※参考文献
阿曽佳郎編『衝撃波結石破砕のすべて』(東洋書店)
松永猛裕『火薬のはなし』(講談社)
日本泌尿器学会『尿路結石症診療ガイドライン 第2版 2013年度版』

【了】

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コメント

1件のコメント

  1. 全然知りませんでしたが、とても良い話ですね。

    もっと日本で知られて広まるべきでしょう。