米軍用車両、その最後の有効活用とは ある意味大切に使われている廃車の「その後」

ときには爆破されることも…?

 こうして放置されているクルマのなかには、経年劣化や射撃の標的となって朽ち果てているものもあれば、まだなんとか原型を留めているものもあります。

 これらの廃車は、標的として設置するほかにも、中に爆弾を模した火薬を仕込んでおいて、車列を組んで行進する部隊が通過する際に爆発させることもあるとのことでした。この訓練は「IED(Improvised Explosive Device:即席爆弾)対処訓練」と呼ばれ、訓練内容によっては、そこで大量の負傷者が発生したという設定に従って、患者後送の手順および攻撃を受けた車両の破壊または回収、といった応用訓練が行われることもあるそうです。

 ただ単に置いてあるだけだと思ってた廃車が突然爆発するのですから、訓練部隊は常に気を張っていなければならず、これらの廃車は厳しい訓練環境を作るために、ひと役買っているそうです。

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訓練期間中、場内の町には民間人役の「ロールプレイヤー」が生活し訓練支援する(武若雅哉撮影)。
簡易的な流し場で食器を洗うロールプレイヤーの女性。ここには普通の生活環境が整っている(撮影:武若雅哉)。
ロールプレイヤーの住環境。肩紐状のものは誤射された時に反応する「マイルス」という装置(撮影:武若雅哉)。

 余談ですが、演習場の中にはいくつかの「想定された町」があります。これらの町はおもに廃コンテナを利用して作られていて、実際に「ロールプレイヤー」と呼ばれる数十人の民間人が10日間の訓練期間中、この町で生活をしています。

 なかでも最大の「ラディシュ」という町には、車体がFRPで履帯(いわゆるキャタピラー)が発砲スチロールで作られた実物大の戦車が置いてあります。非常によくできていて、壊れた履帯も見事に再現されているのですが、近寄ってみるとFRPの繊維が見えていました。

 なぜ本物の戦車も置いてあるのに、これだけ偽者なのでしょうか。アメリカ陸軍の広報担当者いわく「これを設置するときに廃車になった戦車が無かったのでしょう」とのことですが、真相は不明です。

 アメリカ陸軍最高峰の訓練施設であるNTCには、こうして廃車になった軍用車も、施設の中でいつまでも“大切”に使われているのです。

【了】

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