「中央高速バス」はなぜ高速バス市場のお手本に? 変化する甲信地方の高速バス事情

甲信地方の中央道沿線では、京王ら老舗のバス事業者が開拓した「中央高速バス」が地元に定着。一方、上信越道を経由する東京~長野市間は様相が異なります。また近年は外国人利用者が増え、状況に変化が出てきました。

外国人利用者が急増 恵まれた観光資源をどう生かすか

 そして近年、甲信地方で好調なのが、訪日外国人とりわけFIT(個人自由旅行者)が急増している、富士五湖、松本、白馬などを発着する路線です。

 新宿~富士五湖線では近年、「富士山と五重塔と桜が1枚の写真に納まる」として、タイからの観光客を中心に「新倉山浅間公園」(富士吉田市)の人気が急上昇し、最寄りの「中央道下吉田」という停留所の乗降人数が突如として増えるという現象がありました。北アルプスを背景に漆黒の天守がそびえる松本城も、世界的なガイドブックの表紙を飾るなどしてFITに人気です。

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手前がアルピコ交通の白馬行き、奥は伊那バスの飯田行き(2018年8月、中島洋平撮影)。

 国内有数のスノーリゾートである長野県の白馬は、国内のスキー市場縮小により、ピーク時(1992年)に比べスキー客は3分の1程度に落ち込んでいました。しかし、近年はオーストラリアやニュージーランドを中心に海外から大勢のスキーヤーが訪れるようになり、冬場の白馬八方バスターミナルはスキー板を担いだ外国人であふれかえっています。2014年に運行を開始した成田空港~白馬線は、多くの空港~観光地直行路線が苦戦するなか、数少ない成功事例といえます。

 長い歴史を誇る甲信地方の高速バスですが、沿線人口が減少を続け「地元から東京への足」としての市場が縮小するなかで、恵まれた観光資源を活かして国内外の観光客を取り込んでいくことが期待されています。

【了】

【写真】「バスタ」開業以前の「新宿高速バスターミナル」、現在の姿

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Writer:

1972年兵庫県生まれ。早大商卒。楽天バスサービス取締役などを経て2011年、高速バスマーケティング研究所設立。全国のバス会社にコンサルティングを実施。国土交通省「バス事業のあり方検討会」委員など歴任。新聞、テレビなどでコメント多数。

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コメント

4件のコメント

  1. 中央道の高速バスを頻繁に利用している地元の者から見て、その理由は明らかだ。JR東の特急あずさに問題が多すぎで利用客を減らそうとしているとしか思えないことだ。料金はバスの2倍。駅によっては2時間に1本。純粋な走行スピードでもバスと同等なのだから、自宅から新宿までの所要時間はバスの方が絶対短い。

    高速バスのバス停周辺に駐車スペースが十分に拡張されたら、地元民のあずさ利用は無くなるだろう。

  2. 好調なのはいいが、運転士が不足している以上いずれ行き詰まる。

  3. 都内区間の車線の少なさやトンネルがボトルネックになって渋滞がひどい。

    週末に1往復乗ったことがありますが、行き1時間、帰り3時間も遅延して大幅に予定を狂わせられました。

    閑散期限定ですがJRの割引商品を使うとバスの普通運賃と変わらない値段でも乗れるので、やっぱりあずさを使うかな…という感想です。

  4. さすが「東京乗りものニュース」。”ホーム”なだけに正確かつ詳細だねぇ。