「中央高速バス」はなぜ高速バス市場のお手本に? 変化する甲信地方の高速バス事情

高頻度運行で地元に定着 甲信地方の高速バス事情

 その後も、京王と現地の乗合バス事業者(諏訪バス、松本電鉄〈ともに現・アルピコ交通〉など)との共同運行で成長した中央高速バスは、わが国の高速バスの典型的な特徴を多数持っています。

 当初は観光客輸送が中心でしたが、その後は山梨、長野県在住者の首都圏への移動(両県出身者の首都圏からの帰省を含む)が主軸になっていきました。「ふだんは地元で買い物するが、おしゃれな服は東京で」というような買い物需要、高速道路沿いに多く立地する精密機械工場員の出張など、利用者は多様です。インターチェンジ周辺の高速バス停留所には、マイカーからバスへ乗り換えるためのパーク&ライド用の駐車場が設けられ、「クルマ社会」のニーズに応えています。長野県各地から新宿行の始発は早朝4時台、新宿発の最終便が長野県に戻ってくるのは24時を回り、地元の人の東京における滞在時間を確保しています。

 中央高速バスは、ほとんどの路線が30~60分間隔で頻発し、平日でも続行便(2号車以降)が多数設定されます。貸切バス車両や共同運行先の車両が続行便を担当することも一般的です。また、当初から座席の電話予約制が導入され、2000(平成12)年には高速バスで初めてウェブ予約も始まりました。高頻度ダイヤのため、特に復路は、用件が早く終われば予約の便より早めに乗り場に来て「前の便に変更できますか?」と窓口で尋ねるスタイルも定着しています。これらの特徴は、中央高速バスのほか、名古屋と長野県方面を結ぶバスでもおおむね共通しています。

 首都圏からの観光客を取り込むため、現地の交通機関や温泉入浴券などがセットされた企画乗車券も多数設定されています。特に京王電鉄は、大手私鉄の中でもグループ会社の高速バスの告知には協力的な会社で、鉄道駅や車内に、富士五湖や白馬、高山などへ向かうバスのポスターが多数掲出されています。

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アルピコ交通の長野県内高速バス車両(2019年1月、成定竜一撮影)。

 甲信地方では、大阪方面へ直通する高速バス路線も好調です。中央道の沿線では山梨県の甲府、長野県の松本、諏訪、伊那、飯田、また上信越道沿線の長野、小諸、軽井沢などからも大阪へ、昼行および夜行の高速バスが運行され、安定した需要があります。

 このほか、南北に長い長野県では県内の都市を結ぶ高速バスも運行されています。戦後すぐに運行を始めた急行バスを高速道路経由に乗せ換えた「みすずハイウェイバス」が長野~飯田間(途中、松本や伊那などのICにも停車)を毎日運行しているほか、平日は長野~松本間のバスもあり、たとえば県職員や地方銀行員など、県内の転勤が多い人の長距離通勤ニーズに応えているのです。

【写真】「バスタ」開業以前の「新宿高速バスターミナル」、現在の姿

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コメント

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4件のコメント

  1. 中央道の高速バスを頻繁に利用している地元の者から見て、その理由は明らかだ。JR東の特急あずさに問題が多すぎで利用客を減らそうとしているとしか思えないことだ。料金はバスの2倍。駅によっては2時間に1本。純粋な走行スピードでもバスと同等なのだから、自宅から新宿までの所要時間はバスの方が絶対短い。
    高速バスのバス停周辺に駐車スペースが十分に拡張されたら、地元民のあずさ利用は無くなるだろう。

  2. 好調なのはいいが、運転士が不足している以上いずれ行き詰まる。

  3. 都内区間の車線の少なさやトンネルがボトルネックになって渋滞がひどい。
    週末に1往復乗ったことがありますが、行き1時間、帰り3時間も遅延して大幅に予定を狂わせられました。
    閑散期限定ですがJRの割引商品を使うとバスの普通運賃と変わらない値段でも乗れるので、やっぱりあずさを使うかな…という感想です。

  4. さすが「東京乗りものニュース」。”ホーム”なだけに正確かつ詳細だねぇ。