航空機メーカー再編へ、エンブラエルは荒波をしのげるか ブラジルの雄が歩んだ50年

順調そうに見える裏側で

 一般的に、開発に巨額な資金を必要とする航空機メーカーは、完全な黒字経営になるまでには時間がかかるもので、エンブラエルもEMB110やEMB-312といったヒット作を連発していたものの、創設から10年以上が経過した1980年代になっても赤字経営が続いていました。そのうえ、前にも述べたようにエンブラエルは国営企業として設立されたため、公務員体質が強い経営陣と社員には、赤字経営から脱却しようという意識が希薄でした。

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2019年「パリ国際航空宇宙ショー」に展示された、エンブラエルの最新型ビジネスジェット機「プライトール600」(竹内 修撮影)。

 また1980年代にはEMB110を後継する、推進式プロペラ(後部で回転し、機体を押す形式)で飛行する小型ターボプロップ旅客機CBA123「ベクター」の開発に乗り出しましたが、野心的な設計ゆえに受注が得られず、開発費の3億アメリカドルが損失となってしまいました。さらに1991(平成3)年に勃発した湾岸戦争の影響による、全世界的な民間航空機の受注低迷が追い討ちをかけたことで、経営状況がさらに悪化。1万4000名にもおよぶリストラを行ったものの、赤字は膨らむ一方でした。

 事態を重く見たブラジル政府はエンブラエルの民営化に乗り出し、1994(平成6)年にブラジルの金融複合企業体と社会福祉年金運用会社に売却されて、民間企業となりました。

 民営化されたエンブラエルに、金融複合企業体から派遣される形で社長に就任したマウリシオ・ノビス・ボテーロは、エンブラエルの企業体質を改善するため、経費削減などの大幅なリストラを実施します。その一方で、国営企業時代から開発を進めていた50席クラスのリージョナルジェット旅客機「ERJ145」と、その短胴型で35席クラスの「ERJ135」の開発を加速させました。

【写真】エンブラエルの軽攻撃機「スーパーツカノ」

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