航空機メーカー再編へ、エンブラエルは荒波をしのげるか ブラジルの雄が歩んだ50年

迫る業界再編、エンブラエルが打った手は…?

 それまでターボプロップ機が主流だったリージョナル(地域)路線にジェット機を投入したいと考えていた全世界の航空会社は、こぞってERJ145とERJ135を発注。両機の中間に位置する45席クラスのERJ140も含めると、1200機以上が生産されるベストセラー機となりました。

 ERJ145とERJ135を成功させたエンブラエルは、1990年代に前述したEジェットを開発。また21世紀に入って進出したビジネスジェットでも成功をおさめ、2013(平成25)年にはカナダのボンバルディア・エアロスペースを抜いて、世界第3位の旅客機メーカーの座を手に入れました。

 しかし2018年7月、エンブラエルはEジェットなどの民間航空機部門を、ボーイングが80%、エンブラエルが20%を出資して設立した新会社へと移行することでボーイングと合意し、事実上ボーイングに買収されてしまいました。

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2019年の「パリ国際航空宇宙ショー」でエンブラエルの展示スペース前に設置された創設50周年記念のオブジェ(竹内 修撮影)。

 エンブラエルが民間航空機部門の売却に踏み切った最大の理由は、「単独で生き残ることは困難であると判断したため」と言われています。その要因のひとつには、リージョナルジェット旅客機市場でしのぎを削ってきたボンバルディア・エアロスペースが、110席から130席クラスのジェット旅客機「Cシリーズ」をエアバスに売却したことで、航空機メーカーの世界的な再編が加速する可能性が高くなったことが挙げられます。加えて、将来的に中国企業の世界市場への進出が予測されることもあります。

 防衛部門は、ブラジル政府などの反対によりボーイングへの売却は見送られましたが、ボーイングとエンブラエルが開発を進めているKC-390空中給油・輸送機など、軍用機の市場拡大を図るための合弁会社を設立することで合意しているため、将来的に防衛部門もボーイングの傘下に入る可能性が皆無ではありません。

 創設50周年を迎えたエンブラエルはいま、間違いなく大きな転機を迎えていると言えます。

【了】

【写真】エンブラエルの軽攻撃機「スーパーツカノ」

Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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